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パフォーマー
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言葉を武器に変え、記憶の森を斬り結ぶ |
西尾雅 |
細やかで柔らかなたたずまいに秘めた鋭い棘。南船北馬一団は言葉で人の心を刺し貫く。鮮やかな手並みは、刺し貫かれたことに気づかぬまま本人は既に死んでいるがごとし。棚瀬は理不尽に痛められた繊細な心根を取り返すため、言葉を武器と化して斬り結ぶ刺客に似る。 招集人がわからぬまま15年ぶりの同窓会に集まった各高校寄り合いのボランティアサークルのメンバー。場所は解散の原因となった火事の後、改装された懐かしのたまり場。思い出話を咲かせるうちに名前と顔を取り違えていることに気づく。示し合わせた2人の入替わりあるいは他人を名乗り出席する擬装に振り回された結果だが、もっとやっかいなのは故意ではなしに変わってしまう人の記憶。過去が立場により異なって記憶されている現実にとまどう。同じ現場に居合わせたはずなのに、取り違え覚えていた記憶は、異なる過去を示す。思い込んだままの記憶の齟齬、その落差が時を経て暴かれる。 再会の挨拶で最初に説明した近況と現実が違うことも明かされる。社長夫人を称した者が、不倫の愛人に過ぎないと告白する。久々に会った友人への見栄というよりは、そう信じたい自分を偽るための虚飾なのだ。かつての恋もそう、二股かけた男のどちらが本命なのか、ただモテている自分を楽しんでいただけ。恋の板挟みに悩める乙女を演じた欺瞞を痛烈に批判される。心の内に隠していた仲間の本音が刃となって襲う。 不審火の原因は本当は何だったのか。煙草の不始末という噂の出所は誰だったのか。紙飛行機が灰皿に落ちて燃え上がった可能性が指摘される。自分の失策を糊塗し喫煙者に罪をなすりつけるため噂を広めた疑惑が消えない。知りたいのは、けれど火災にまつわる真相ではない。妬み憧れ、好き嫌いなど当時の本心なのだ。それが相手にまったく伝わっていなかった事実に愕然とする。父親が急死した仲間への励ましがプレッシャーとなって引きこもってしまったことが明かされる。思いが逆の結果を引き起こすこともある。 辛らつな態度。伝わらない思い。かえって相手を傷つける慰め。投げかける言葉はときに凶器となる。けれども、言葉を介するキャッチボールを続けるしか生きて行く術はない。彼らはゲームのようにパステルのカラーボールを交換する。色合いの違ったボールを高くやわらかく、ときに激しく投げ合う。それは彼らが託す言葉。ひとりひと色の心が集まって虹の光となることを信じて。 なお本作は、04年1月10(土)〜12日(祝)まで京都芸術センターでも公演。詳細は、劇団HPにて。 http://nansenkikou.hoops.livedoor.com/
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