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ある一夜の夢十夜 松岡永子
 ご存知、夏目漱石「夢十夜」の朗読を、こぢんまりした場所で楽しもう、という企画。それにしては豪華なメンバー。
 女優だけでも二人。きりっと凛々しい女丈夫の趣きがある京ララと、それに比してたおやめぶりの佐野キリコ。だから、第一夜の百合の女は佐野キリコだろう、という予想は裏切られ、二人とも出演。なんとも贅沢。
 以降も、「わたしの夢十夜のイメージ」と目の前で展開する夢十夜のイメージとの相違を楽しむ。
わたしならこうするだろうなあ、などと考えるのも面白い。(もちろん、思った通りにやるには技量が必要だが、難しく考えず)

 第二夜。文章で読んでいるとき、男は悟ったのか悟っていないのか、いつも判然としない。だが、森田の朗読で聞くと、この男は悟らないな、となんとなく思う。あんまり率直でまっすぐで、悟るなんて姑息なことはできないだろうと感じる。

 第八夜。床屋の鏡に現れる風景・現れない風景が、二人で読むことによって立体的に現れる。本を読んでいるときには、こんなに楽しい、リズミカルな話だとは気付かなかった。

 主宰の田口は第四夜の「蛇になるゥ」の爺さんと第十夜の豚に舐められる男を、実に楽しそうに読む。まず演者が楽しんでいる。それについては意見もあるだろうが、まあいいかな楽しければ、と思う。まさに、一夜の贅沢な楽しい夢。

 全員が並ぶとそれだけでいっぱいになる狭い舞台。その範囲内での動きはあるが、装置なし、照明・衣装もいたってシンプル。
 形態としてはやはり朗読。しかし演者が役者だとやはり演劇的。ジャンル分けなど無意味。

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■朗読
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