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+ 小島剛(こじまたかし)

大阪在住の音楽家。主にmacintoshとプログラミングソフトmaxを使って即興音楽を中心に国内外で活動中。

+ 塙狼星(はなわろうせい)

1963年生まれ。人類学を専門とするアフリカニスト。中部アフリカの旧ザイール、コンゴ、カメルーンが主なフィールド。アフリカの踊りと音楽をこよなく愛する。

July 2003 1:34PM from 塙 狼星  自己紹介(その1)

小島 さま

返信が遅れて、心配かけました。スペインとフランスからの声は、ちゃんと聞こえていますよ。学期末の試験シーズンで、少々忙しくしていました。日本の日常に埋没し、鬱陶しい梅雨時を暮らしていると、貴兄のいる場所について想像するのが、難しいですね。

さて、いよいよスタートです。ザイールのリンガラ語で言うならば、Tokende!=レッツ・ゴーです。コンゴでのワークショップに向けて、メールで対話しながらアフリカの文化と音楽を語ろう、というのがこの企画だと思うのですが、どうなるか楽しみです。まずは、ご注文にあった自己紹介(過去の研究と現在の研究)から始めるべきでしょうね。ぼくの肩書きは、前回、冗談で、「郷土史家」などといいましたが、これからは、「アフリカニスト」でお願いします。

アフリカとの個人的な関わりは、1989年の夏からになります。人類学の研究目的で、この年、幸運にもアフリカに初めて足をふみいれました。それから断続的に、アフリカに行き、主に、地方の村に滞在して調査をしてきました。いままで訪れた国は、ケニア、タンザニア、ジンバブエ、ザンビア、ボツワナ、南アフリカ、ルワンダ、ブルンディ、旧ザイール(現コンゴ民主共和国)、コンゴ共和国、カメルーンです。この中で、長期滞在したのは、旧ザイール、コンゴとカメルーン。いずれも中部アフリカの国々です。

中部アフリカは、赤道付近に位置する広大な熱帯雨林地帯で、ぼくは、アフリカの中で、この地域に魅力を感じてきました。実際に行ってみるまでは、アフリカはもちろん、この地域についても、ほとんど知識をもっていませんでした。でも、ザイール川という大河が流れ、「ピグミー」と呼ばれる狩人が住み、昔ながらの焼き畑を営む人々が住む森という、イメージはありました。旧ザイールは、映画「地獄の黙示録」の原案となった、コンラッド「闇の奥」という小説の舞台です。この小説もまた、私に重厚な森の世界のイメージをつくりだしていました。

さて、研究の内容について。簡単にまとめるのは難しいのですが、ぼくの興味は、人と自然が関わる中で生み出される文化を研究することです。アフリカでは、四大言語集団の一つである「バントゥ系」の民族を対象にしてきました。バントゥとは、旧ザイールの主要な民族で、いまから三千年ほど前に、西アフリカから断続的に移住してきた人々を祖先としています。現代のアフリカは、都市化が進行し、テレビやラジオなどメディアが普及し、貨幣経済を通じてグローバル化していますが、同時に、ちょっと地方にいくと、伝統的な生活スタイルを維持している人々もたくさんいます。バントゥの人々は、従来、焼き畑をすることで生計をたててきました。また、森の奥深くに住み、狩猟採集民「ピグミー」との間に、家族的なパートナーシップを作り上げてきました。このような、いわば〈共存の論理〉に、ぼくは興味があります。だから、精神文化を含めた、人と森、人と人の関わり方や価値観、広い意味でのアフリカの森に住む人々の自然観を研究してきました。

実は、アフリカには、1997年を最後に、ここ5年間ほど行っていません。では、最近何をしているかというと、主に、アジアの各地に通っています。インドネシアをはじめとして、マレーシア、フィリピン、タイ、インドなどの国々です。アフリカとアジアをつなぐのは、なかなか難しいことなのですが、ぼくは、「バナナ」というモノでつないでいます。それは、初めて訪れたザイールの村々がバナナで囲まれていたからかもしれません。その時、飲ませてもらったバナナ酒がおいしかったからかもしれません。いずれにしろ、バナナという生き物が、東南アジアを故地として、アフリカまではるばる旅をしてきたというのは事実で、バナナの足跡をたどっています。バナナには「足」があるんですよ。

過去の研究にしろ、現在の研究しろ、全然具体的な話しをしていませんが、これからおいおいとお話していきたいと思います。

今日は、とりあえず、ここまで。

はなわ

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