駒香姐さん(以下、お姐さん)「東京へ参りましてもね、この頃は私も大阪弁丸出しにな(笑)。今まではええ顔して、タクシーの運転手さんにも'あ、そう、行ってね'っちゅようなこと言うてね(笑)
」
米朝師匠(以下、師匠)「ははははは(笑)」
お姐さん「'向こう曲がっちゃって、こっち曲がっちゃって'って言うとな(笑)、歌舞伎座ぐーっと(前を通りすぎて)曲がってくれんねん(笑)。もうそれから、うっかり言うたらあかん思ってな(笑)。この頃はバーッと(大阪弁で)言いますねん。'ここ、ほんならどないする?ほな何時に乗ろな'言うて話してたらな、その運転手さんがな、'お客さんは、関西ですね'。'はあ、そうでんねわ'。'よろしいですよー!'言うて。'はあ。なんででんね?'言うたらな、運転がうまいこといくらしいねんて。やんわりして」
米朝師匠「ほぉん」
お姐さん「ほいでね、東京弁やったら、乗せますがな、ほんなら、'ああ行っちゃったの?ダメね!'て、ちゃっちゃーと言うからパパーッと行かなあかんねんて(笑)。せやけど、隣で'ほなしゃあない、そうしまひょ'言うてたらな、勝手に車がフーッと…」
師匠「はっはっはっはっ(笑)」
お姐さん「この頃、特にそない仰いますねん。私が物言いますのが、もちゃもちゃ言いまっしゃろ?それもええらしいねん、環境にね」
師匠「ほぉー」
お姐さん「グエーッとしてる世の中で、ホゥっとしはるらしいねん」
師匠「ひょっとしたら、その人は、東京の人ではないんかもわからんね」
——— なんか懐かしいと言うか…。
師匠「関西やのうてもね。青森から来てようがやね、新潟から来てようがやね」
お姐さん「懐かしかったんやと思いますわ。私らが物言うのがね、あほなこと言いまっしゃろ?自動車に乗っててもな。それがええらしかったですわ。食べることばっかり話ししてな(笑)。どこで食べよばっかり(笑)。東京行ったら食べることばっかり!この頃(笑)。(舞台が)済んだらどこも行くとこないから、しゃあない、食べよか食べよかばっかりでね。'何がええ?''ほな肉にしよか'言うたりしますねや」
——— 東京ではどこに泊まってはるんですか?
お姐さん「もう十何年から銀座丸ノ内ホテル行ってましたんや。ほならな、(ホテルが営業を)止めましてん。土地きれいにな、してしもて。こないだちょっと覗いたら、みなきれいになってしもて。あっこ便利やねん、ちょうど裏が歌舞伎座やしね」
師匠「はいはい」
お姐さん「んで、銀座に行くのにちょうど金光教会がありましてな、お参りに行くのにちょうどよかったんですねん。ほいで、半蔵門のなんやったか名前まだ覚えられへんねんけど、国立(劇場)がわりと近いもんでっさかいな、そこへこの頃泊まってますねん。前から国立の人が言うてくれてはったんですけど、ちょっと歩かんならんのがいややったんでね。雨降って傘持つと、三味線がね…」
師匠「はいはい」
お姐さん「それで、銀座のほうへ泊まってたんですけど」
師匠「あんまり近いと車に乗るわけにいけへんしね」
小柄なお姐さんが三味線を持って移動するのはたいへんだ。
相三味線の藤田小道さんとは名コンビだったが、その小道さんが亡くなられてからは、駒香姐さんは三味線も弾いている。
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