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+ 山下里加
+ 細馬宏道(ほそまひろみち)
1960年西宮生まれ。滋賀県立大学人間文化学部講師。
会話とジェスチャー解析を中心としたコミュニケーション研究のほか、パノラマ、絵葉書、幻灯などの視覚メディアに関心をよせている。
主な著書に『浅草十二階』(青土社)、『ステレオ』(ペヨトル工房、共著)。訳書にリーブス、ナス『人はなぜコンピューターを人間として扱うか』(翔泳社)。
WWW版『浅草十二階計画』:
http://www.12kai.com/
親指記:
http://www.12kai.com/oyayubi.html
e-mail: mag01532@nifty.com
9/25(木) 8:44PM from細馬 道頓堀から遠く離れて

細馬です。

ロンドンからです。ホテルの電話回線につないでいるのですが、
その電話料金がなんと1分1ポンド(約180円)。しかも回線がやたら遅い。
(料金が)こわくてインターネットもできません。
このメール、たぶん送料60円くらいです。
あ、なんだ、葉書と思えば安いですね。

今回は行く先ごとに絵葉書を買いあさり、あまり大きな声で言えないほど金をはたきました。まあ、おんぼろ中古車一台分、といったところ。いずれ本の資料に使って取り返したいなあ。

今日は一日じゅう大英図書館にこもりっきりでした。
この図書館のいいところは、広い机を一日中個人のワーキングスペースとして活用できる点。ほとんどの本は閉架でリクエストして本を受け取るという点では日本の国会図書館と同じなのですが、なんといっても机が広い。照明付き。10冊くらいばんばん積んで読書している人も多いです。
各机には番号がついており、本をリクエストするときは、端末で本を検索して、自分の利用者IDと机の番号(これが重要)を打ち込みます。本が出てくると、机の端のランプがともるので、カウンタに行ってそれを受け取る。

疲れたらカフェレストランで日替わりメニューをがつんと頼みます。味は(イギリスにしては)まずまず。本に溺れるにはなかなかよいスペースです。
不満はコピー代が高いこと。セルフサービスはA4までで、一枚35-40円。見開きにできないのが痛いです。コピー代がもったいないので、その場で読んで覚えるか、ひたすら書き写すことが多くなり、
結果的には頭によく入ります。

一日中図書館にいると、自分が読書マシンのように感じられます。マシンに油をさすためにランチを食べ、頭のめぐりが回復したらまた文字を眼にぶちこんでやる。なるべく、文字以外の情報にまどわされないように、しかし文字が何か余計なことを考えさせるときは、ためらわずその余計な考えに向かうようにしておく。その余計なことはノートに書いていく。
100年前にイギリスの好事家が編集したぼろぼろの本の文字を眺めながら、
100年後の自分がなにやらノートにあやしいことばを書き付けている。図書館の時間は不思議です。

こうやって読んで書き、読んで書きし続けて、20:00の閉館ごろにはふらふらになります。

ところで、阪神優勝で5000人が道頓堀に飛びこんだんですって? 人の上に人が飛び込んだんだろうか。
こちらではとんと実感がわきません。
日本にいたところで、甲子園にも道頓堀にも行くわけでもないと思いますが、
それにしても日本ならば、もうちょっと世間のうきうきした感じというのに便乗する感覚が自分に生まれるのではないかと思います。ずっと関西育ちで、浜甲子園に住んでたこともあるし、
阪神は昔から憎からず思っておりまして、しみじみ「よかったなー」とは思うのですが、
この感じは「フィーバー」ではない。

優勝「フィーバー」なる感覚は、やはり視覚の洪水によって、
つまりテレビのニュースや新聞の見出しによるもうええっちゅうくらいの視覚攻撃によって、
生まれるのかなと思います。

応挙、楽しそうですね。帰国したらいちばんに見に行きたい展覧会です。

ほそま

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