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+ 山下里加
+ 小山田徹(こやまだとおる)

1961年生まれ。京都府在住。1984年、京都市立芸術大学在学中にパフォーマンス集団、ダムタイプを立ち上げる。
主に企画構成、舞台美術を担当。国内外での公演多数。
1992年、コミュニティセンター“Art-Scape”を運営。
1994〜96年、“Weekend Cafe”を運営。
1998年、コミュニティカフェ“Bazaar Cafe”の立ち上げに参加。
2000年、ダムタイプでの活動を休止。個人活動を開始。
2001年、共有アトリエ T-Room の立ち上げに参加。山口情報芸術センターのプレイベントとして、市民との協働プロジェクトを開始(現在も継続中)。
2002年、『Beautiful Life』展(水戸芸術館)出品。
2003年、『ガーデン/山荘の時間』展(アサヒビール大山崎山荘美術館)にて、連続ワークショップを開催。

12月14日(日)8:23PM from山下 道ばたで空き缶にけつまずいたら。

小山田徹さま。
山下里加です。

元気ですか? お忙しそうですね。
私は、ようやく仕事に一段落つきました。いやはや、ハードでした。
仕事のひとつが、芦屋市立美術博物館の売却もしくは休館になるかもしれない、という問題。
まだ取材にかかったばかりですが、休館、売却なんて本当に前代未聞で私も反対なんだけれど、美術界からの抗議の言葉と、市民の中からの美術館を考えようという声とのギャップに、立ちすくむような思いがします。
「美術」って誰のために、何のために、あるんでしょうね。

ところで、今日の写真は、コレです。
何か分かります?
12月はじめに、ある雑誌の仕事で倉敷に行った時に発見したものなんです。
ひさしぶりの雑誌仕事、しかも倉敷は学生時代以来ですから、十数年ぶりです。

正直いうと、倉敷にはそんなに期待していなかったんです。“運河と白壁の蔵の町”っていうけれど、なんか時代劇のセットのようだし、団体客いっぱい、変な土産物屋があったりして、もう完全に観光地、テーマパークだと思っていたんです。
ところが、どっこい。
今回は、めちゃくちゃ面白かったのでした。
取材だから、地元や店の主人と話をして一歩踏み込んだからかもしれないけど、なんともまあ、深い、そしてちょっと過剰で、溢れているんですよ。何かが。。。

写真は、「倉敷ガラス」という吹きガラスでコップを作る時の型なんです。
倉敷ガラスは、小谷眞三さんという、クリスマスの飾り玉(写真手前)を作っていた人が昭和39年ぐらいから研究をはじめた手作りのガラス器の総称。その頃は、ガラス器を作る文献も資料もなかったので、イランやメキシコのガラス器を見て、全くの手探りで作り始めたんですって。

同じ大きさのガラスコップを作るためには型が必要。で、一番最初に使ったのは、たまたま道ばたでけつまずいた鉄パイプの切れ端だったんです。次に、見つけたのが空き缶(写真の右)で、内部に針金をナナメにはってガラスコップに模様をつけていたそう。だけど、あんまり面白くないなあ、と思って、ふと写真左のようにまっすぐに針金をはって、そこに熱い吹きガラスをいれ、ねじりながら抜くと躍動感ある模様になったそう。
写真の空き缶2つはもう使われていないけれど、今も工房にはほぼ同じ空き缶(桃缶だった…岡山名産?)があって、それで作っているんですよ。

身の回りにある当たり前の物が、本来の用途や役目からどんどん変化していって、新しい役を平気な顔してやっている。
それって、すごい! 面白い!!
近頃、そんな感覚になっています。

私自身は頭が固くて、目的のために作られた物しか使えないんですが、物の目的をどんどん変えていく人達って、すごく尊敬します。
ホントに、ごくごく最近になって「物」が面白いと気づいたのでした。

えーと、ずいぶん長くなってきたので、倉敷の過剰な何かは、また会った時にでも。。

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