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+ 山下里加
+ 小山田徹(こやまだとおる)

1961年生まれ。京都府在住。1984年、京都市立芸術大学在学中にパフォーマンス集団、ダムタイプを立ち上げる。
主に企画構成、舞台美術を担当。国内外での公演多数。
1992年、コミュニティセンター“Art-Scape”を運営。
1994〜96年、“Weekend Cafe”を運営。
1998年、コミュニティカフェ“Bazaar Cafe”の立ち上げに参加。
2000年、ダムタイプでの活動を休止。個人活動を開始。
2001年、共有アトリエ T-Room の立ち上げに参加。山口情報芸術センターのプレイベントとして、市民との協働プロジェクトを開始(現在も継続中)。
2002年、『Beautiful Life』展(水戸芸術館)出品。
2003年、『ガーデン/山荘の時間』展(アサヒビール大山崎山荘美術館)にて、連続ワークショップを開催。

3月6日(土)3:40PM from小山田 猫道を裸足で歩けるか?

 

山下里加様
小山田徹です。

先日はお疲れ様でした。ダーチャなんとかなっていますか?
空間は少しいじるだけで大きく雰囲気が変わるので面白いですね。

さて、ブリコラージュですが...
難しく考えると長くなるので、今回は気楽に考えた場合のお話を。

私の田舎、鹿児島県姶良郡蒲生町にカオルおじさんという山仕事をしている遠い親戚がいます。カオルさんは、台湾の山岳部族やアンデスのインディオにそっくりの人です。赤銅色に全身が日焼けし、背が低くて痩せてはいるけど、はがねの様な筋肉を持っています。山に入る時も、裸足でも大丈夫。今や、70歳を越えるおじいさんと言ってもいい年なのですが、私は後をついて行くのが無理なくらいです。喋る言葉もとてもディープな鹿児島弁で、私でも半分ぐらいしか解りません。私は、子供の頃から、このカオルさんに様々な山の事、川の事、畑の事などを教わってきました。鳥のさばき方もカオルさんから教わりました。(カオルさんの鳥の刺身は絶品です)つまりカオルさんは私のサバイバルの先生なのです。さて、カオルさんの何が凄いかというと、山仕事や畑仕事、料理、建築なんでも出来るのですが、その際使用する道具が鉈や鎌、包丁などの2、3の道具で全てをこなしてしまうところです。山にある木の枝なんかをちょいと利用して背負い子を作ったり、山での食い物もすぐ探してくるし、あっと言う間に小屋を建てたりします。ホントにそのへんにある物で何でも作ってしまうのです。スーパーマンです。ちなみに自分の家も自分で造ったそうです。私は子供ながらに尊敬の念を抱いていましたが、大人にになってさらにその凄さを改めて感じています。現在の私達は何とたくさんの道具や物を必要としている事か。

私は舞台の大道具の仕事や大工の仕事の手伝いなどを長くして来ましたが、そこにも、カオルおじさんみたいなスーパーマンおじさんがいるのです。飄々として、にこやかな、力の抜けたおじいさんが、現場で予定外の事が起きた時、その辺にあるものでヒョイと解決策を作り、何事もなかったかのように事が進んでいく。別に大騒ぎするほどの事でもなく、当たり前のような顔で淡々とこなす・・・・かっこいいです。

私はこんな大人になりたかったんだ!

最近、つとにそんな思いを深くしています。

「つぶしが効く」という事は単にスキルがあると言う事だけではなく、全体のバランスや状況判断、物への洞察力、やさしさなど様々なものがベースとなった経験値が導くものであると思います。

芸術とは何か?と問われる事がよくあります。大変な質問ですね・・・。私は本当のところ分かっていません。多分、生活の機微、人々、物々の間あたりに存在していると思うのですが・・・それが何とは言い表せずにいます。言葉や物にしてしまったら変質してしまいそうで、美術家という社会的立場との整合性を今は欠いた状態です。世の中の様々な人々や所作の中にそれを見い出すことがあるし、人々もそれを、意気、腰、呼吸、腕、真、礼、たおやかさ、脱力、ねばり、慈しみ、コツなど、様々な呼び方で言い表わそうとしているように思われます。「つぶしが効く」という事もかなりそれに近い事かなと思っています。

ブリコラージュは私が・・・かっこいい・・・と思う価値観と重なるものと考えています。物への慈しみの目や、風景や状況、人への興味などは、その「かっこいい」へ続く道の入り口にあるものかなと思う今日この頃です。

さて、今回の写真ですが、山口市で散歩しながら見つけたセルフビルド(増築)の家です。ぼろぼろですがいい風合いです。

では、又。

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