コミュニケーションツール
カタチやサイズは定型なんですが、ボディーやヘッドなどに選んでいる素材がそれぞれ味わい深く一つ一つが個性的ですよね。どこを切り取るか決めるのは依頼者との話し合いで決めるんですか? 何回くらいその現場へ足を運びます?
制作前に現場へ行くのは1回です。そこで依頼者に建築物の歴史や背景、住んでいる人や関わってきた人の思い出や心境など聞きながら、その建物の写真を撮り、どの部分を切り取ってウクレレにするか決めていきます。「じゃあ、ここ切りますよ」って時にまた様々な思い出が蘇ってきたりして。取り壊し現場で聞くことの出来る建物にまつわるエピソード自体が重要なんです。
そしてウクレレが出来上がったら郵送ではなく依頼者のお宅まで届けます。たいていの場合その時にはもう新居が出来上がっていて、それをバックに家族のみなさんとウクレレとで記念撮影をすることにしています。
人の節目に2回も立ち会ってますね。
そうなんですよ。壊される前と新しく出来上がった後のめでたい場にも立ち会うんで、やっぱり葬儀屋とも少しニュアンスが違うなあ。
ム展示に合わせていつも演奏会をされていますが?
楽器だからね。僕自身、楽器として充分なクオリティーを持ったものを目指して作っているし、聞きたいという人も多いので、展示する時には毎回、演奏会をすることにしてます。僕が自分で演奏するのは違うような気がするので、友だちで、4番目の、寺山家ウクレレの寺山直哉さんとそのウクレレの先生との3人でやってます。
水戸では地元のハワイアンバンドの人と組んで演奏したそうですが?
京都以外で展示するのは初めてだったんですが、やっぱり演奏会をするからには展覧会をするところの人とやりたいと思ったので、学芸員さんにウクレレを弾ける人を探してくれるように頼んだんですけれど、紹介してくれたハワイアンバンドの人にテープを送ってもらって最初に聞いた時はどうなるかなあノって正直ちょっと不安になりました。ハワイアンて各世代にファンがいてそれぞれ目指す世界がかなり違うんですよ。でも、何度も会って話をしてアレンジを決めていって、結果的には大盛況。やっぱり地元の人とするのは楽しいわ。
アーティストという仕事
ウクレレの発注はコンスタントにあるんですか?
来ない時は来ないですね。そうかと思うといっきに話が来たりする。今年の2月3月と何もなかったけど、4月以降続けて三つほど注文があったり、1ヶ月に2回も東京に出張することになったりといろいろですわ。そのすべてが偶然なんですが、新聞の取材なんかも入ったりしてそれ見た人が依頼してきたりして、でもそんなん計算できへんからね。そういうつながり方で今まで来てる。自分であせって営業活動しなくても結果的にコンスタントにつながっているのでそういうもんかなと思っている。
仕事が来なかったら不安になったりしません?
何もしないでも平気でいられる神経がなければ作品をつくっていくのは無理じゃないかな。そこでひとつふるいにかけられるかな。独り遊びが上手かどうかも大事だわ。
と話す伊達さんのアトリエには、何年も前から建物の肌合いを集中的に撮り収めている写真や、多肉植物のコレクション、針金ワークなどのフィールドワークというか遊びは日常の中で同時進行で行われていて、温めている(寝かしている)ネタもまだまだあるようだ。これらのほとんどは、日々の生活の中から得た素材がほとんどだ。しかし、その着眼点や発想の転換はおそろしいほど絶妙で天才的だ。
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