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編集後記
伊達さんにとって天職とも言える『建築物ウクレレ化保存計画』。一本を1ヶ月ほどかけて丁寧に仕上げられるこのウクレレはれっきとした楽器であり、依頼主にとっての大事な思い出の逸品であり、デザインの要素もあれば、職人技もあり、落語のネタのようでもあって、それぞれの要素が結集して重層的で魅力的な作品に仕上がっている。また、展示される時はそれぞれのウクレレに在りし日の建築物の写真や部材説明など分かりやすい解説が付けられ、さらに裏側も見えるように小さな鏡が設置されていたりと細かいところまで気を配るというように、鑑賞者への配慮も忘れない。分かりにくいという代名詞のつく『現代美術』とは一線を画す。
ここで『現代美術』っていったい何?ってう人は多いと思われるが、実は広辞苑には現代美術という言葉は存在しないのだ。私自身もまだ整理途中だ。おおざっぱにまとめると、教会や貴族階級といった権力に擁護され、芸術が一部の人のためだけに創作されていた時代から、19世紀末、権力から解放され自由になった作家たちは社会に背を向けて自己の世界を追い求めるようになり、20世紀の美術は一貫して平凡な日常的感覚世界を拒否し、実験と分析にあけくれた。その結果、社会から孤立し一般の人々のあいだには大きな断絶が出来てしまった。60年代初めにアンディーウォーホルの作品に見られるような日常に使用する商品のパッケージや有名人の肖像を版画(シルクスクリーン)で大量生産するなど、消費社会をテーマにした親しみやすいポップアートというような作品も生まれたが、最近では、多様化しすぎて美術という土俵が肥大化しさらに分かりにくくなっているのではないか。そのせいで良質な作品までもが「現代美術」という名のもとに敬遠されるという事態に陥っているのではないだろうかと。
しかし、私が作品と向き合う時いつも基本にしていることは、「自分が感動したかどうか」である。「感動」した時は脳からアドレナリンがドクドク流れ出す。瞑想状態と近いのかもしれない。今まで見たことも考えたこともないような新たな視点を突き付けられ、頭をガツンと殴られた感じ。そして頭が澄みわたる。これは視覚芸術に限らず、音楽でも文章でも舞台芸術でも、自然の樹木や虫の姿などに、また人との出会いや会話にも同じようなことは起こる。どっちかというと、感動出来ればなんだっていい。
今さらジャンルなんてどうでもいいことなのだけれど、敢て言うなら、社会と共存しながらアイロニカルな側面も備え持ち、芸術の新たな存在意義(可能性)を提示しているこの『建築物ウクレレ化保存計画』は今の時代における『表現』と言えるのではないだろうか。そしてこれは『コミュニケーションをテーマにした作品』ではなく、作品自体(制作過程も含めて)がコミュニケーションツールだということも重要なポイントであるということも付け加えておく。


制作過程(京都芸術センター元明倫小学校旧校舎の例 )
1. 改築前の建物の様子
この校舎は数年前まで現役で使われていました。白い漆喰とアメ色に光る木造部分とのコントラストが美しい内装です。床もよく油引きされています。部分的に改築され、2000年京都芸術センターとして生まれ変わりました。
 
2. 廃材の入手
壁板、壁の腰板(ラワン材)、床板(ナラ材)を入手。
 
3. パーツの切り出し
ウクレレのヘッド、ネック、反響胴に必要な部分を切り出します。このウクレレの場合、床材が指板に、壁材がその他の部分に使われています。
 
4. 組み立て
ネック・ヘッド形成、側板用の曲げ加工等が行われ、それぞれの部品が接着されます。塗装後ウクレレ用の金具、弦などが取り付けられます(表面の肌合いを残すため、基本的に塗装はなされません)。
■興味のある方はこちらまで →Fax 06-6849-2802


番外編

ウクレレレ
実は、サウンドインスタレーションの作品を制作していた頃「飛び出すほど積極的な聴覚」という意味で『天才バカボン』に出てくる「耳がビヨーンと飛び出しているレレレのおじさんの顔のシルエット」を使った作品を作ったことがある。「耳の構造上受動的なものとされているけど実は聞き方によっては感度は違ってくるし、能動的な感覚でもあるんだよ」って。その時に、楽器にいけそうなカタチやなあと思っていたらしく、それから4年後、ウクレレを作ってみようかと考えていた時に赤塚不二夫さんの娘さんとの出合いがあったりして、『ウクレレレ』をひらめいて実現化された。
裏側には漫画の原作者である赤塚不二夫さんの「おもしろいのだ」というコメント付きでサインが!
 
針金ワーク
ちょうどロンドンへ留学して帰ってきてしばらくひまでひまでしょうがなかった頃、ドローイングをするように、張り金で人の顔を作りはじめた。なぜかおじさんの顔ばかりで、口でメモをはさめるようになっていてそれぞれに圭介とか忠雄とか名前が付けられていた。そのうち、外人の顔なんかも(それでもおっさん)作るようになって。現在は香皿としてお皿付きになっている。
■水戸芸術館のミュージアムショップにて販売中 7000円
 
OKミユージックボールのCDにも登場(2002年9月発売)。
バンドのメンバーの4人顔が作られジャケットに。
OKミユージックボール初!単独アルバム『Da Da Conne』
Long Interview vol.1 伊達伸明 archive
>>Part1
>>Part2
雨森信
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