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<花形能舞台>の人びと〜味方玄の場合〜

子供の時に見た能ってどんなんですか?印象に残った能は?

味方「『土蜘蛛(つちぐも)』なんかが出るとバスに乗って見に行く。『葵上(あおいのうえ)』も見に行く。『道成寺(どうじょうじ)』なんかあったら絶対見に行く!…あれは、小学生やったか、中学生やったか…当時、まだ博太郎(ひろたろう)という名前やった九郎右衛門先生(片山九郎右衛門/かたやま・くろうえもん)の『遊行柳(ゆぎょうやなぎ)』の〔序之舞(じょのまい)〕後から拝見して、いたく感動して」

『遊行柳』なんて、柳の精のお爺さんが閑かに閑かに舞うようなシブいシブい曲で?子供のくせに感動したの(笑)?具体的にどんなとこに感動したんですか?

味方「僕が覚えてるのは、‘倒れ伏し柳…’というところで、出て行って下がって、ペタンと座らはって、‘西吹く秋の’と、何もしはれへんねんけど…、こうやって回って帰って行かはんねんけど、‘はぁ…’と思て感動したん。で、そのあとに、違う年かなあ、これも博太郎時代の先生が『鉄輪(かなわ)』を<早鼓(はやつづみ)>でなさったのを拝見して、それがまた‘はぁ…ええやん!’と思たん。父も、能を見に行くことは僕が物心つく頃から奨励してくれてたし、名古屋の<藤田昭彦の会>で、銕之亟(=8世)先生の『清経(きよつね)』の<恋之音取(こいのねとり)>と、九郎右衛門(=当時・博太郎)先生の『融(とおる)』の<舞返(まいがえし)>があって行ったん。中学生の時かなあ…熱田(神宮能楽殿)の2階から拝見してたけど、よかった…」

観世寿夫(かんぜ・ひさお)さんの舞台もご覧になってますよね

味方「それは京都で。寿夫先生は僕が小学校6年の時に亡くなってるから最晩年。でも、強烈な印象やった。グワーッとやってる『安達原』とか、細い細いデッサンのような『鉄輪』の仕舞とか…。でも、一番印象に残ってるんは、『羽衣(はごろも)』の<和合之舞(わごうのまい)>を舞わはった時。こんな綺麗な能があるのかと思うぐらい…。〔キリ〕で、‘三保の松原…’と、白い長絹(ちょうけん)をフワァッと、両手を広げはった時、もう、全部が直線で描けるような綺麗さの広がりやって、‘はぁ…’と思て」

他にも遠くまで見に行ってたんでしょう?

味方「先生(=九郎右衛門)の『道成寺』は岡山の後楽園まで拝見しに行ってるよ。弟連れて」

いくつの時に?

味方「小学生の時」

二人で?小学生やのに?

味方「父が『安宅(あたか)』の同山(=ツレの山伏)やってん。すごい番組よ。観世元昭(かんぜ・もとあき)先生の『安宅』、先代のお家元の『半蔀(はじとみ)』の<立花供養(りっかくよう)>、それと先生の『道成寺』。そら見に行くやん(笑)」

それ!見たい見たい(笑)

味方「んで、弟と一緒に脇正面(わきしょうめん)に座って見てた」

楽屋にも挨拶に?(笑)

味方「一応(笑)。その頃、よく父にくっついて、楽屋に手伝いにっていうか、邪魔しに行ってるやん(笑)。ある時、『鵜飼(うかい)』の仕掛けをしてはるのを見てて、父が‘触ったらいかんぞ!’って言うねんけど、見てみたいやん?そしたら、九郎右衛門先生が、‘あかんかったら、また作ったらええがな’って」

やさしいですねえ

味方「養成会で西本願寺の能舞台の構造を見に行く時に誘っていただいたり、天河弁財天で弟に子方が付いた時に僕も一緒に誘ってくださったり。‘行く行く絶対行く!’って(笑)。装束の虫干しの時も父にくっついて行って拝見して、触ったらあかんねんけど、でも先生が向こう見てはる間にちょっと触ってみたり(笑)」

んふふふふ(笑)。玄少年はもうとにかく見たくて触りたくてたまらなかったわけだ(笑)

味方「だって、先生の『鸚鵡小町(おうむこまち)』が見られへんからって、申合せ(もうしあわせ)を拝見するのに中学校休んで行ってんで。6年生の時から地謡に出てるから、当日は他の催しに売れてて(笑)」

ほぉん(笑)。片山博太郎(=現・九郎右衛門)のファンだったのね

味方「うん(笑)」

そうかぁ…だから、どうしても、片山先生に入門したかったんや。片山九郎右衛門のファンだから、というのが、ほんまのとこの理由やったんですねえ

味方「うん」

書生時代に、毎日一人で腹筋トレーニングしてはったって聞いたことありますけど(笑)。美術部やったのに、運動神経っていうか、瞬間的身体能力めちゃ高いですよねえ。『土蜘蛛』で突然宙返りした時はビックリしましたよ。『舎利(しゃり)』の時も、座ったまま後ろへジャンプとか

味方「腹筋は毎日50回から100回やってた」

ほんまに腹筋してたんや(笑)。ほかに毎日してたことは?

味方「そうじ(笑)」

あ〜(笑)それから(笑)?

味方「お茶沸かす、新聞取り入れる(笑)。でも絶対、謡は謡うもんね、どこかの会や稽古で」

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