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上村「我々は大体25日間舞台を勤めておりますでしょ。先生は大体一回。その舞踊会とかのプレッシャーからくるストレスって大変なもののような気がします」

山村「僕も昔は歌舞伎の役者さんって‘ええな’ってそう思っていたんですよ。でもね、だいぶ前ですが、新歌舞伎座の舞台に出して頂いて、昼夜同一演目だから、‘やった、50回も出来る’、そう思たんですけど、その中で一回、何日目かにお扇子を落としてしまったんです。けど、十代の頃でしたし、落ち込んだけど、‘まあ明日もある’、そう思うたんですね。そうしたら、その後で、何か僕の話題が出て‘あー、あのお扇子落とした人’って言われたんです」

上村「うーん」

山村「だから結局一緒。その一日一日の大切さは一緒なんですよ」

上村「うちの主人(片岡我當)も‘舞台は一期一会’って。‘その日しかお客様には観て頂けないのやから’って言います。その日しか見て頂けないお客様のためにも舞台にかけなきゃいけない、主人のその教えは物凄く大切な言葉ですね・・・」


山村「でしょう。だから役者さんの方が大変やなあって思いますよ。一回で終わらへん。その緊張が続くねんから・・・。僕らあの緊張感を25日もよう続けんなあー」

上村「でも、それまでに気持ちをピークに持っていくのは大変なことでしょう。先生がリサイタルで『歌右衛門狂乱』を踊られて、そのずっと前から扇を持ってお稽古してらっしゃるのを見て、ああ、これだなと思ったんです。役者は直前にならないと、そんなことはようしないと思います」

山村「『歌右衛門狂乱』の時は近づいてくると、お稽古の時から手だけ白粉(おしろい)塗りますよ。着物着て、白粉塗った感覚はそれはちょっとでも違いますでしょ。」

上村「ええ、そうですね。あのう、東京の方でも、井上流や山村流のようにお座敷のような形態から発達した舞というのはあるのですか?」

山村「それは知りません。けど、舞踊の中でも、上方舞とかって分けるでしょ。歌舞伎も上方、江戸とかって分けるけど、外の人間から見れば分かれることであって、僕らにとってはこれが普通に舞踊なんですよ」

上村「大阪でやっている舞踊ということですか。でも、先生は大阪にこだわってはりますよね」

山村「うん。こだわってる。大阪の匂いをなくしたくない。僕は匂っていたいから・・・。その匂いがよう分からん人間になるのは嫌なんですよ。吉弥さんも僕と同じ匂いがしますよ(笑)」





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