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成田「一つの舞台をつくるときに、それぞれみんな思いがあって、申合せがあって、そこで意見を言い合うということになるのかな。そういうとこの話し合いというか…」

片山「地謡もおシテを見て調子をとっていくし、自然と落ち着くとこへ、ある程度落ち着いていくと思うんやけど、ただ、例えば、さっき言うた『邯鄲』の位(=くらい)の取り方なんかは、それは、どうするかということを、やる前に十分に相談しとかなあかんやろね。調子の取り方をどう取るのかとか…まあでも…」

上野「そうですねえ、そういうところは結構その時その時でいろいろ…」

山本「今回は、当日に申合せをするということで、一番心配してるのは、そこのところで、結局、船頭さんの役割を誰がどういうふうにするのか…申合せから本番までの2時間くらいの間で、どこまで詰められるか…逆に、それで何か違うものが見えてくるかもしれない、というのも面白いと思うんやけど」

成田「それこそ、今回、申合せが終わって、みんなで喧嘩になってエライことになったら、どないなるんやろな(笑)とかね」

片山「そういうことは、ようあるさかいな」

成田「え?!ようあるの?」

片山「うちらはな(と、味方玄を見る)」

成田「え?!そう?!あんたらこわいな(笑)」

山本「まあ、誰とは言わんけどさあ、<花形能舞台>の最終日に『邯鄲』舞う人なんかはさ(笑)」

味方「誰や?!」

山本「何があっても自分のええようにしはると思うし」

味方「しはらへんて(笑)」

全員「うはははははは(笑)」

味方「もう長いものには巻かれろ、言うて(笑)」

全員「うはははははは(笑)」

成田「ほんまやなあ?(笑)」

山本「言うてろっちゅうねん(笑)」

成田「まあ、イメージとしては、申合せから本番まで、そんなに時間がないんやけども、ある程度のことはちゃんとものが言えて、それで本番に臨めるようにしたいなと」

山本「その世界を上手につくって行かんといかんと思うんですよ、船頭さんがいいひんから」

成田「そうなんだよね」

浦田「この間も、ある会でちょっと喧嘩になりかかったことがあったもんね」

成田「そうそう」

浦田「でも、あれが一番面白かったし、一番勉強になったし。上の人が監督する会では、地謡の位から調子から全部決められてるもんね」

山本「(笑)今回の配役について言わしてもうたら、それこそ玄ちゃんについていうたら、ほんまにそう思うたんや、冗談抜きで。この人は誰とやったかて自分のやりたいことを…」

味方「やらへんちゅうねん!」

山本「やり通さはると思てん」

片山「なんや協調性のないように聞えるやん(笑)」

味方「もう!どんだけ大人になったか(笑)」

全員「ぎゃははははは(爆笑)」

山本「で、雄三さんに関して言うたら、偉そうなこと言うてすんませんけど、なんて言うか…雄さんは今までとは違う地謡の中で舞うてほしい人なんです、僕らにとったら」

成田「そう!そう!そう!!」

山本「すごく、そう思たんですよ」

成田「それがね、大阪ではあんまりそういう機会がないのでね。きーちゃんの地謡で是非とも!と思って」

山本「ほいで、保浩さんについて言うねやったら、僕、実は一番楽しみにしてるんですよ。今の保浩さんと一番違うもん見せてもらえるんやないかなと思て、うん。どうしても、その…周りに縛りたがる人がいてて、保浩さんて、縛られたがってる人に見えるねや(笑)」

浦田「(笑)まあ、そういうふうに教育受けたんやろな。そういう目を意識するように」

山本「せやから、極端にそういうのがないところで、とんでもないことになってほしいなって(笑)。保浩さん自身では、そういう環境をつくることは非常に困難やし。保浩さんが、好きにやってくれる場所をつくりたかってん」

浦田「正直言うて、この話もらった時、僕はミスキャストやと思うたで」

成田「ようそんなこと言うわ!(笑)」

浦田「いや、‘こういう趣旨で、きーちゃんに謡うてもらう’って聞いた時に、ええ?!僕ミスキャストちゃうか?!て」

山本「逆に、きーちゃんはきーちゃんでさ、‘保浩さんが舞わはるのん、僕が謡うてええのん?’みたいな言い方しててんで」

片山「そうや」

山本「実は、たっちゃんにこの話をした時に、シテの3人に関しては、僕の中で決まってたのよ。で、たっちゃんもそれやったら何も文句ないって言うてくれたし。各々別のもんを見てみたいし。で、僕は京都のお舞台へはちょこちょこ寄せてもうてるけど、実は、きーちゃんの地謡はそんなに知らへんのよ」

成田「でも、いつも僕とかが、きーちゃんの地頭はええって言うから」

山本「おもろいでっていう話を聞いてて…で、『隅田川』でお相手させてもうた時に、‘うぅっ’ってなって、ああ、この時間をもうちょっと味わいたい…と思ってしまったのよ」

味方「‘うぅっ’ってなりたかったんや」

山本「そう(笑)。ほいでこんなこと(=今回の企画)してしもたんですよ。ごめんな、ひょっとしたら、みんなにも迷惑かかるかもしれへんけど」
 さて、では彼らは<花形能舞台>をいったいどんな人に観てもらいたいのだろう。

成田達志

成田「大阪っていうのはすごい人口多いでしょ。京都なんてそんなに人口は多くないのに、能の会がたくさんあって、わりとお客さんも集ってると思うんだけど、大阪ってまだまだ能に接したことのない人が、もう山盛りいてはる土地なんですよね。そういう人たちに、どうやってこっちに振り向いてもらうかっていうのもすごく大事で、で、そういう人たちを受け入れられるレベルの(高い)催しをしないかんと思ってるんですけど」

片山「そういうの、羨ましいけどな」

味方「京都は、ある程度決まったお客さんが循環してるっていうか…」

山本「東京へ行って一番感じるのは、そこやと思わへん?なんかたくさん催しのチラシやらがあって、お客さんも、かなりのパーセンテージで普通の芝居の感覚で見に来てはる人がいるのよ。こっちだと、同じ顔ぶれなんやろうなぁと思うて、自分らも同じルーティーンを繰り返して、みたいな…」

成田「国立能楽堂(東京)なんか、どんな時にも売り切れて満員になってたりするやんか…東京だと、いい催しなんか切符が手に入らへんかったりすることが結構あるよね」

山本「なんていうのかな、見てはる人の好奇心ていうのがわかるっていうか。舞台に出てても、ギラギラした目で見てはんねやろなあって思うことがあって、そういう人を大阪でも能に引き込まれへんのかなあと思って。大阪にもいてへんわけやないと思うねよ、そういう人たちが」

片山「せやけど大阪へ来てさ、ええ雰囲気のお客さんの時ってやっぱりあると思うよ、京都でもやけど」

味方「あるよなあ」

 ええ雰囲気のお客さん。
 一緒にその日の舞台をつくりあげてゆくような空気が漂う時がある。
 それは、静かだったり、熱気に満ちていたり、いろいろだが、舞台上の出演者の思いと重なって、ものすごいエネルギーになる。
 もちろん、舞台の上が水準以上でなければならないのが大前提ではあるが…。

山本「なあ、きーちゃん、本番当日の申合せってどう思う?」

片山「んー、稽古、どっかでせえへん?例えば、さっきの話やけど、監督者がいいひんにゃったら…。こんなやり方がええかどうかわかれへんけど、ビデオ撮って、あとでみんなで見るとか、調子のチェックをするとか」

山本「おっ、有難い話が出てきたやないの?(笑)」

成田「おお、いいねえ」

片山「決定的に具合の悪いところは舞台の上で言うやろし、ビデオて、そんなにあてにはならんと思うけど」

成田「まあ、でも、やってみる価値はあるよね。そんなことやったことないもん」

山本「さて、僕は言いたいことはみな言うたけど、なんか僕らに言いたいことありますか?」

片山「まあ、1回やってみんとわからんなという気持ちもあるし。うん。ま、言うてるよりも、やったらええんとちゃう?」

山本「ほんまにやってみんとわからんねん。でも、やってみたかってん」

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