住棟間の屋外スペースや各棟の玄関口にあたるエントランス・ピロティの空間そのものがアート作品化するというもので、11人のアーティストが計画段階から関わってプロジェクトを進めていく全体のコーディネートをしました。今までいっしょに仕事をしたことがないタイプのアーティストとか、建築家やゼネコンの人とかそれぞれ思考や言語の違う人間が集まって進めていたので、美術の展覧会やプロジェクトのように思うようにいかないことがあったり、葛藤もあったりもしたけれど、普段あまり接する機会のないジャンルの人達と仕事が出来たというのは、今から思えば貴重な体験だったと思ってます。
以前に、人から“糊”みたいなものだと言ってもらったことがあるんですけど。一人メディウムですね。それが複数になるとメディアになる!
情報を伝えていくための必要なツールが雑誌、新聞、インターネットなどで執筆することであったり、軸を持ったエピソードだったり、展覧会やイベントをプロデュースすることであったり、ネットワークを繋げていくというのも重要なことだと考えてます。
インディペンデントだからこそ出来ることでしょうね。
まあ、経済的には厳しいけれど、一人でいるから小回りがきくし、自分の蓄積やニュートラルな立場を最大限に活用出来ればと思います。大掛かりなプロジェクトになると予算も大きくなるので一人でするのは難しいんだけど、一人では出来ないことでも(大勢集まれば何かが出来るというわけでもないんだけれど)、そのつど必要な人や組織などとつながっていって、実現させていけばいいわけで。
ちょうど今、東京に新しくオープンする森美術館の二つ目の展覧会『六本木クロッシング』(2004年2月予定)では、日本人のアーティストを紹介する展覧会のノミネーターとして出品作家の選考等の仕事もしています。ファインアートだけじゃなくて、ファッションや建築などのさまざまなジャンルに通じたノミネーター(6人)がいて、それぞれに与えられているプレゼンの時間も決められているんですね。それで複数のアーティストを紹介するのに単純に割ると一人のアーティストを紹介するのに6分しかなくて、あまり知られていないアーティストだと、出来るだけたくさん資料を見せたいと思って、ビデオとか見せてるとすぐに時間が経ってしまって…美術館の学芸員の人達は次の会議があったりするので、「まいて下さい!」ってことになってしまったり(笑)。
こういう大きな美術館での展覧会では、自分が日常的に蓄積している情報を私一人で発信していくのとはまた違って、もっと有意義なものとして生かせると思うし。ここで一つの達成感や次への活力みたいなものを得れます。
4月2日にremo(NPO記録と表現とメディアのための組織)で行われたSkartのレクチャーも原さんがいなかったら実現してませんもんね。
この時は、急にベオグラードから日本(金沢)に来ることが分って、それもぎりぎりまでビザがおりるかどうか分らない状況だったけれども、関西空港から帰国することになっているから大阪に来るということで、そんな機会はめったにないだろうし、じゃあ彼らの活動について話を聞く場をつくろうと、一週間前だったんですけど、準備をはじめたんです。
急に決まって、メーリングリストでインフォメーションしただけだったのに、たくさんの人が来てくれたし、喜んでもらえましたよね。
これなんかも、私が彼らの話を聞きたいというのがまずあって、でも一人で聞くのはもったいないし、多くの人に聞いてもらうために、一番いい方法で実現出来るようにはどうしたらいいかと考えて、それでremoにつないでみようというような流れで、別に自分が主催者にならなくても、また仕事(収入になるという意味での)ではないんだけど、こんなふうに人と人や人と作品、情報などいろんなものをいいカタチで繋いでいって、この日のようにみんなが喜んでくれたら幸せな気分になりますね。
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