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五世河原崎国太郎

卒業されるとどうするんですか?

「うちは師匠弟子がないでしょ。暫らく助手していてずっと先代の国太郎さんとご一緒にいたんですよ。あれがまた役に立ちました」

先代の国太郎さんは当時お幾つぐらい?

「同じ干支、酉で僕と四回り違うんですよね」

そんなに離れてらっしゃったんですかー。あの菊之丞さんが邦次郎時代に新七をされた‘真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)’。あれは大抜擢ですよね。

「あの新七の役は最初は芳三郎さんだったんですよ。それを先代の国太郎さんが‘芳三郎には私が言うから’って付けて下さったんです。嬉しかったけれど、だけど大きな役ですし、あんな風にしてもらって出来なかったらどうしようかと怖かったですよ。出来なかったらというより普通にはしたいと思いました。一生懸命するのは当たり前ですが、一生懸命しましたねえ」

菊之丞さんは当時お幾つだったんですか?

「28歳です」

あれはでも、芳三郎さんが新七をなさるより、当時の菊之丞さんがなさった方がぴったりときたんじゃないですか?年上の女師匠と初々しさのある青年ですもの。

「國太郎さんも多分そうしたお考えがあって、あの役を付けて下さったのだと思いますね。ご覧になられました?」

いえ、残念ながら劇場中継のビデオでです。でも何度も何度も見ましたよ。本当に良かったですもの。

「あれは凄いでしょ。あんまりないでしょ。国太郎さんが女性を物凄く出していて、観ていたら凄い芝居やな〜って思いますもの。ぞっ〜とするでしょ」

ほんと、ぞっとしますね。女ウン歳になってあらためて見たら尚更ぞっとして切なくなりました。女性の業というんですか・・・つまされて分かります(笑)。

「国太郎さんはそういう情念みたいな所がガッーと出るんですよねえ」

‘豊志賀の死’の部分は以前から歌舞伎で何回か観ていましたし、落語では通して聴いたことはありますが、芝居で通して観たのはビデオだけなんですよ。因果のめぐりが面白くて、最後の墓場の場面も怖〜い。いいお芝居でした。劇場で観たかったです。

「そうですねえー。でも、きっとあれは今は出来ないですね」

そうですか?

「やっぱり豊志賀をやる方が、よっぽど先代の国太郎さんみたいな人でないと・・・」

菊之丞さん、豊志賀やられませんか?

「いやあ駄目ですね。いい意味もっと女性の感性を持たないと無理ですね」

微妙ですよね。かといって、本当の女性がやると何か違う気がしてしまうのではと思います。私は女方さんで観てみたいと思う芝居ですね。

「あの時のことは今思っても、いい経験でした」

菊之丞さんは劇団に入られて何年になられたのですか?

「うーん。23年。・・・早いですねえ」

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