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2.ワークショップ

品田冬樹(以下:品)
 最初は、その場ですぐに描けないんじゃないかって思ってたんですよ。最近は子供でも野原に連れていかれて遊べって言われても何もやっていいのか分からないってこともあるようですし、ましてや大人はフリーズしてしまうのではないかと。
それで安全策をとって、公募でも事前に集めておいて、参加者が描けなかったらそっちから選べるようにしたんですけど、実際はこちらの認識とは裏腹にみんな描けたんですね。意外と野放図に自分の心象風景や自分の恐いと思うものを、または自分の好きなもの、虫や緑を愛でる心がなぜか怪獣というカタチをとっていたり。かなり野放図な創作力の活路みたいなものが見えたので驚いてます。想像していなかった手ごたえがありました。

 そうなんです。僕もびっくりしたんです。最初は本当にどうなるか全く分からなかった。郵送で応募されたものとワークショップで描かれたものの中から実際に僕と品田さんが選んで立体化するというプランなんですね。郵送でも200点以上応募があって、それぞれがおもしろいので、選べないんじゃないかと思うほどです。
 結局、怪獣っていうのは単なるゴジラ映画に出てくるだけのものではなくて自分の中の問題点、内面をさらけだすようなとんでもない存在だったようです。普段自分の考えていることがつい出てしまうというのもあって、公募作品の中にはスーパーに並んでいるところに割り込むおばさんが巨大化してたり、おじさんのような絵が描いてあって、何かなって思ったら「ビンラディン怪獣」。と言うように社会の問題を反映していたり。タイトルが「対ゴジラ新怪獣創造計画−あなたの中の怪獣を目覚めさせ!」なんですけど、例えば42歳の人が15歳の時に考えていた怪獣を描いてきて、やっと僕の中の怪獣が目覚めた!って送ってきた人もいてました。
 ワークショップに参加している人に関して言えば、実際に話をしてどういう人がどんなふうに描いているか見えるのでもっとおもしろいんです。最後に合評会で、一人一人が、自分の描いた怪獣についての説明、怪獣の名前やどこで生まれたかなどのストーリーを説明するんだけど、子供から大人まで自分の創った怪獣について、年令関係なくまるで幼児のように話し出す。そして本気でディスカッションしている。ストーリーもけっこう緻密に考えられていて、環境問題や戦争、情報化社会といった社会背景もちゃんと取り込まれていたり。怪獣というフィルターを使ったことで、みんなが解放されて、童心に帰ることが出来たようです。また内面を掘り起こす作業をすることが出来るということを発見したのは大きな収穫です。人によっては本気でゴジラの大戦相手を考えている人もいて、参加者は本当にいろいろいだったんですけどね。
 あと美術館というところのお膳立てが整っていると「あっ、いいんだ!」って思えるようですね。
 これがデパートのイベントだとまた違う。権力を借りるというと語弊があるんですが、こういう広義なところでやると解放されて独り遊びにふけることが出来る。
設定あそび。みんな子供の時にやりますよね。自分の物語を作ったり、キャラクターを設定して人形を動かしたり。羽を生やしてみたり、それが大人でもこういうきっかけや場所を与えられると、自然に出来るんだということ。誰にでもそういう部分がちゃんと残っていて、「でたらめでいいんだ」って分かると喜々として描き出すんですよ。

 美術のワークショップだと何をやってもいいんだけど逆に広すぎて何をやったらいいのか分からなくなったりするけど、今回は映画のための「ゴジラと対決する怪獣」と明確だったから、その枠の中で自由にできたんじゃないかな。
 日本人て口火を切るのが苦手というか疑い深くて、足下をすくわれてばかにされるんじゃないかって本能的に思っているところがあって、遠巻きに見てるところがあると思うんですけど。今回のように、もっともらしいきっかけがあると、意外とおもしろがって自分なりの物語を紡ぎ出すんですね。最近はキャラクターブームでほとんどの人が消費者として受け手側に回っているとタカをくくっていたんですけど、自分で物語を考えたり、キャラクターを作ったりすることが出来るんだなということを発見。それがまだ幼稚だったり洗練されてなかったとしても、自発的にはじめる素質、はみんな持っていて条件や機会さえあればすぐに発露する。これはこういう場がなければ発見出来なかったし、とても面白い。もっとやりたい。
 そうですね。
 今回はこの後、二人でそれぞれ選んだものを立体にするとことになっていて、一つずつ選ぶんですけど、二人の視点の違いがはっきり出ました。というのは品田さんはやっぱり、実際映画する時に現実的に出来るのかということを考える。映画というのは、人が入ってお金を稼がないといけないからある程度の枠を守らなければいけない。反対に僕はそれを覆すことでとんでもないものが出来ないかなという立場で。
 そう言えば、今度のゴジラに売りこもうかなっていうのをいくつか見つけてましたね。(笑)

*ワークショップ
2002年6月9日(日)川崎市岡本太郎美術館で行われたワークショップ「対ゴジラ新怪獣創造計画・あなたの中の怪獣を呼び覚ませ」より

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