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<お初天神>の“ねき(=傍ら)”の割烹<北龍(ほくりゅう)>。
せんせ(=先生)、わざわざお運びいただきましてありがとうございます。まずは生ビールでよろしいですか? 菊生「うん。今日はありがと」
<天神祭>を目の前にした曽根崎界隈は、いつにも増して賑やかだ。
せんせ、お嫌いなものはないですか? 菊生「うん、ない。(グビッとビールを飲んで)ああ、美味しいね。あのね、アタシの今考えてることはね、70歳まではね、大事に生きろってこと。そこまでは、大事に大事にしてね、70になったらね、何してもいい」 何してもいいんですか?(笑) 菊生「うん。そっからは、寿命だ」 ふっ(笑) 菊生「痛切に感じた。70過ぎて酒も煙草も飲まずにって、そんなんで肺癌になるやつもいるしさ(笑)。ね」 ねぇ 菊生「だから、70までは立派に生きて、あとは、運命だと思って。みんなに‘菊生先生は70過ぎても<勧進帳>(=『安宅』)なんか舞ったりして元気だ’って言われたけど、75過ぎてから、季節で肉体の衰えを感じた」 75を過ぎてからなんですか?! 菊生「うん、季節でね」 季節?! 菊生「季節が終って、次の季節になった時に、‘あ、肉体が衰えてる’って、いろんなことで感じたね。それでね、80になるなぁって思ったときにね、月で感じたのね。‘先月はこんなに出来たのに’って。そいで、81になったらね、1日ごとに感じるようになったの(笑)。1日ごとだよ(笑)?ほんと」 1日ごと… 菊生「そう。1日ごとに衰えるのをね、普通、治療とかなんとか考えるじゃない。そうじゃなくて、‘それは当然なんだ’って開き直ったらいいと思う。そして、舞台を勤めるのは、今までの蓄積があるんだから、火事場のくそ力じゃないけど、出来るんだよ。それでも出来なくなったら、幕を引けばいいと思う」 お?ほいじゃ、先生の幕引きはまだまだってことですね 菊生「うん」 嬉しいな〜 菊生「文ちゃん(=大槻文藏/シテ方観世流、大槻能楽堂理事長)にね、‘菊生さん、来年は、こんなの(=演目)をなさったらどうですか?’って言ってもらうとね、これはね、役者は嬉しいもんだよぉ」 毎年ご出演なさってる大槻能楽堂の自主公演ですよね。菊生先生が来年も出るっておっしゃったら、大槻先生も、そら、ものすごく嬉しいと思わはるでしょう 菊生「文ちゃんに恥をかかさないように、って思ってね。また、なにか、なにか、と思って訓練するの」 あっ!じゃ、来年も大槻能楽堂で(能を)なさるんですね!わーい 菊生「うん。そのかわり、‘来年で終ります’って、はっきり言ったの」 えーっ?!あ、でも、来年のことは来年になってみんとわからへんもんね〜(笑) 今年、大槻能楽堂自主公演能は16公演。 |
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