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 第二幕は、肥後橋にあるgrafが運営するギャラリースペースgmが舞台だ。

 この舞台装置=草間彌生とgrafのコラボレーションが、実に素晴らしい。

 草間さんは、これまでにも、鏡台やベッド、椅子や机などをソフトスカルプチャー(柔らかい彫刻)で覆った作品を多数発表してきた。が、それらは“作品としての家具”であり、実際に使うことは出来ない。grafが草間スタジオに提案したのは、“実用度の高い芸術表現”として「YAYOI KUSAMA Furniture by graf」というファニチャー・レーベルを立ち上げることだった。
・br>  草間作品にしばしば登場する「星」と「黄樹」をベースに、grafが制作したソファ・セットやスツールを配置。また、それらの貼り地になったテキスタイル(製造:川島織物)を使って、草間彌生ルームを作りあげたのだ。


 黒地に黄色い水玉模様の服を着た草間さんが「黄樹」のソファに深々と腰を下ろす。完璧な風景だ。これほど優雅に、自然体でこの椅子に座れる人は、いない。

 graf代表の服部滋樹さんと立ち話をする。

----素敵なコラボレーションになりましたね。今の感想は?

服部「ファンタスティック!」

----ぴったりの言葉です。

服部「パーフェクトですよ。時代も状況も、今がベストのタイミングだった」

----時代とは?

服部「草間さんがニューヨークで活動していた1960年代から70年代の始めと、今の2002年はよく似ていると思うんです。どちらも高度成長期やバブル経済のツケが回ってきて、物だけが氾濫した前の時代をもう一度考え直そうとしている。多分、そんな共通の時代背景があって、そこで僕らと草間さんが出会えた。時間を超えてシンクロしているんじゃないかな」

 草間スタジオの秘書、高倉功氏も言う。

高倉「何度かgrafのスタッフと打ち合わせをしたのですが、彼らはどこかヒッピーのコミューンのようだなと思ったんですよ。1960年代の草間は、仲間達とハプニングを行ったり、映画を撮ったり、ファッションの会社を興したりしていました。ひとりの孤独な絵描きではなく、草間というキーワードでいろんな立場の人が参加したり、便乗したりしながら、草間のアートを具現化していったんです。時間も場所も違いますが、grafの試みはその頃の精神を継いでいると思います」


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