黒地に黄色い水玉模様の服を着た草間さんが「黄樹」のソファに深々と腰を下ろす。完璧な風景だ。これほど優雅に、自然体でこの椅子に座れる人は、いない。
graf代表の服部滋樹さんと立ち話をする。
----素敵なコラボレーションになりましたね。今の感想は?
服部「ファンタスティック!」
----ぴったりの言葉です。
服部「パーフェクトですよ。時代も状況も、今がベストのタイミングだった」
----時代とは?
服部「草間さんがニューヨークで活動していた1960年代から70年代の始めと、今の2002年はよく似ていると思うんです。どちらも高度成長期やバブル経済のツケが回ってきて、物だけが氾濫した前の時代をもう一度考え直そうとしている。多分、そんな共通の時代背景があって、そこで僕らと草間さんが出会えた。時間を超えてシンクロしているんじゃないかな」
草間スタジオの秘書、高倉功氏も言う。
高倉「何度かgrafのスタッフと打ち合わせをしたのですが、彼らはどこかヒッピーのコミューンのようだなと思ったんですよ。1960年代の草間は、仲間達とハプニングを行ったり、映画を撮ったり、ファッションの会社を興したりしていました。ひとりの孤独な絵描きではなく、草間というキーワードでいろんな立場の人が参加したり、便乗したりしながら、草間のアートを具現化していったんです。時間も場所も違いますが、grafの試みはその頃の精神を継いでいると思います」
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