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 『ソウルスタイル』には、李さん一家が使っていた“物”だけでなく、もうひとつすごいものがある。データベースだ。会場の一隅に設けられたコーナーでパソコンを操ると、最初に李家の全体の見取り図が現れる。一部屋をクリックすると、そこが拡大される。そこから先がすごい。たとえば、キッチンから冷蔵庫をクリックすると…。

・クルミ=アボジが出張先でもらった
・トウガラシ=アボジの実家で採れたものを冷凍保存
・スルメ=祭祀用。10枚1500ウオン。
・粉ミルクの空き缶=中身は生の穀物類を粉にした自家製ダイエット食品。水200ミリリットルに混ぜて飲む。
……

とまあ、えんえんと、“物”の写真とそれが李さんちにある理由が出てくるのだ。ほとんどがささいな、持ち主でさえも忘れていたような物であり、ありふれた理由だ。でも、次々とデータベースを探っていくうちに、李さんちの5人それぞれの輪郭線が現れ、性格や日々の生活ぶり、それぞれが背負っている社会環境まで分かるような気がしてくる。会ったこともない他国の人の“物”で、人に触れたように感じる。それは、とても不思議な経験だ。データベースは、3千数百点分ある。

----膨大なデータベースですね。

「それが、『ソウルスタイル』の最も大切なところなんです。僕たち現代人は、大量生産された同じような物に囲まれて生活している。だけど、その“物”に込められた“想い”は、個々人で違う。ならば、“物”を調査していくことで、“人”が見えてくるのではないか、と考えたんです」

----佐藤さんが見ようとしているのは、“人”なんですね。

「もちろん。そのための建築調査であり、社会調査なんですから」

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