日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物 |
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<松山ダンスウェーブ>
大野:そうこうしてると「松山ダンスウェーブ」っていうコンテンポラリーダンスの企画が始まりました。これは松山市の事業で、松山はせっかくダンスが盛んで、若い子たちもやってるんだから、それがもっと市民に広がればいいね、ということで行政がコンテンポラリーダンスを応援するというような仕組みとして立ち上げた。行政がダンスの事業にお金を出したという、非常に先駆けだった。水戸芸術館や静岡(SPAC)などをモデルにして、またちょっと違う形だけれども、コンテンポラリー・シーンを作るっていうことで。
メガネ:「松山ダンスウェーブ」は今も続いているんですか?
大野:最初はとにかく3年間、財団法人地域創造とかから助成金もらってやってたみたいです。いろんなワークショップを招聘したり、舞台もフランスからフランソワ・ラフィノ・カンパニーを水戸芸と一緒に招いて、松山でも作品が上演されましたが、この作品は難しすぎて(笑)、というか芸術的すぎて……、ちょっと存在が遠かった。
それからワークショップ事業が多くなりましたね。松山市はドイツのフライブルグ市と姉妹都市なんですけれども、当時フライブルグ市立劇場でアマンダ・ミラーが芸術監督をやっていた関係で、松山にアマンダ・ミラーを招いて一緒に作品を作るというプロジェクトを、残り2年間やってましたね。アマンダを何回か招いて、オーディションを兼ねたワークショップをやってふるいにかけて残していって生まれたのがyummydance(*1)です。
それでyummydanceたちは、ドイツにも行ってバレエ・フライブルグ・プリティ・アグリー(アマンダ・ミラーのダンスカンパニー)と一緒にやったり、プリティ・アグリーが松山に来て一緒にパフォーマンスしたり。国際親善大使みたいな(笑)部分でもあって。ここまでが、立ち上げから約3年。一応それで大きなくくりが一旦終了。
それからはワークショップ事業と、約2ヶ月に1回の市民からの公募のパフォーマンスをやってました。ダンス・ボックスのもうちょっと市民版みたいな感じで、参加者の幅も門戸も広くておもしろかったです。で、これも一応前年度が最後ということで、松山ダンスウェーブはほぼ終了というかたちですね。
……というのが、観客の立場から一市民として「松山ダンスウェーブ」を見てきた私の概観です。
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『応答せよ!こちら自分』
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<放し飼い計画>
大野:まだ松山ダンスウェーブが立ち上がる前に、その企画者の方が「いくらでもいいアーティストを呼べるコネクションもあるけど、まだこの事業走ってないから、まだ無理。もったいない……」とか言ってるのを聞いて、「大学のダンス部で呼んだら来てくれますかね?」とか言ったら「交通費とギャラさえ出せば来るんじゃない?」って言ってくれました。実はうちの大学に「部活動の特別指導者招聘制度」という制度があって、これは、助成金の上限も日数も決まってるけれども、強化練習のための特別コーチを招くための交通費とかギャラを補助しましょうというもので、これ使ったら呼べるんちゃうん、っていうので、水戸経由でフランスの振付家エルヴェ・ロブに来てもらったりしたんですよね。
その辺が私が招聘事業をやり始めた最初の頃で、私がどこかに行って習ってきて教えるよりも、本物引っ張ってきた方が遥かに「早い」ということに簡単に気がつきました(笑)。たった1週間でも部員の成長はすごいものがあります。カルチャーショックがもたらす「集中力」「好奇心」「吸収力」っていうのはすごいですね。それが年々積み重なっていくと、だんだん違ってくるので。
もちろん私自身も相変わらず外へ出て行くけれども、自分が学ぶことにプラスして、いい先生と繋がることも大きな目的になってきました。その辺からちょっとスタンスが変わりましたね。だから、いい食べ物を選んできて「これ食べなさい」と言うよりは、いい牧草地だけ用意してあげて、あとはまぁ好きに育ちなさいっていう、‘放し飼い計画’と呼んでますけど(笑)。
マキ:こうして松山という土地のダンス文化に恵まれた状況を聞くと、先日学生の皆さんにお話を聞いた時の印象が、そのまま蘇るんですけど、ほんとに与えられたものを素直に吸収して、それで出来てるんだなっていう感じだったんですよね。
大野:だから出来るだけいい先生を呼んであげたいなと思う。それに、もし学生が外に何か見に行きたい、外でワークショップ受けたいとか言ったら、「どうぞどうぞ、いってらっしゃい」って。別に全くリミットかけないんですよ、うちは。「情報は自分で取りなさい。どこでも行きなさい」と。だってそんなの、自分で選んだ方がいいし、行ってダメやったらダメやったでいいし。情報をふるいにかけたり、リミットかける権利は指導者にはないんですよ、実は。リミットかけられるほど私えらくないし。これも‘放し飼い計画’のひとつ。
うちの学生はこういう大会とか来るとちゃんと「先生、先生」って言って持ち上げて、意見とか感想もちゃんと若い順に言って、最後が私だったりするんですけど、ワークショップで誰か招聘するでしょ。私も勉強したいから、時間のある限り一緒に受けるんですよ。ほんなら、私が前に行こうが後ろにいようが全然関係ないし、先生に後で教えてもらおうとも、場所を譲らなきゃとかもこれっぽっちも思ってなくて(笑)。非常にありがたいし、うれしいですけど。実は、私自身も連中の中に‘放し飼い’されてるんかもしれませんね。
*1 yummydance :松山を拠点に現在、国内外を活躍中の女性ユニット
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