日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物 |
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<自分の居場所をつくれ>
メガネ:モダンダンスでもヒップホップでも、基準があるダンスでは、その基準に達している人がえらいっていうのはもう自明で、そういった中での階層化って自然に行われちゃうと思うんです。松山大にそれがないのは、うまくなるとか、かっこよくなるともちょっと別のものをめざしている?
大野:あ、ちょっと違うと思います。だから妙にうまくやろうとかかっこよくやろうとか思ってると、「アイツ勘違いしてんちゃうん」とか(一同笑)、すごい言われて。人間って本来誰でもかっこよくなりたい。それはフツウ。けど、それが強くなりすぎると「自己顕示欲」ばかりが際立ってしまう……。そういうのが「カンチガイ」な状態。舞台に立つ人は、時々この「カンチガイ」をやっちゃう。
うちの学生は自分らが上手だとは全然思ってないんです。バレエやってた子なんていないし、大学からダンスを始める子がものすごく多い。男の子は100%そうですから。愛媛は高校もダンスが強いので、高校の時にダンスやってた女の子は多いけれども、全然初心者で始める子もものすごく多い。いわゆるダンスの既存のテクニックも、恵まれた身体も持ってないけど、自分らにしか出来んことを探せるようになってきたんがここ4,5年くらいかな。それまでは、自分とこの子たちが創った作品、「これお茶大の子が踊ったらすごいやろな」とか(一同爆笑)。「からだないよねぇ」とか(笑)、純粋に思ったこととかあるんで。今思えば、自分たちの‘身の丈’に合った表現や動きを探せてなかっただけなのよね。
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『応答せよ!こちら自分』
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アリ:でも、一人一人が納得はしてる感じがするよね。自分の役割っていうか。
マキ:動き方が等身大な感じ。
アリ:そうそう。一人一人の。奇形が重視されるっていうか、ちっさい子はちっさい子でいい、おっきい子はおっきい子でいいっていうのがわりとコンテンポラリーで、同じ粒を合わせてピーナッツ並べてるやろうみたいな感じじゃなくて、キャラ立ちを自分らで自覚してるっていうことじゃないかと思う。
大野:そうですね。それが出来てない時は全然ダメですね。だから、今回もコンクールの子たちに言ったのは、自分の居場所、自分の踊る場所は自分でつくれと。作品の中に必要とされるかどうかは自分が決めるのやと。あんた自身が決めるんであって、先輩が決めることじゃないっていう、それは自分がやらんとしょうがない。
メガネ:そういうところから、作品って、端っこからじわじわって変わってるっていうか出来てるって感じがしますよね、確かに。
大野:変わってきますしね、やっぱり。人はひとりひとり違う。コマじゃないんやから。
<イマジネーションの扉>
アリ:今回の『サイトトレイン』では、歌う場面でも僕は泣いてます。そんな、ダンスで泣くって松山大学ぐらいしかないんですよ。でも3年連続で僕には来るツボっていっぱいあって。今回のも、僕の中で歌は反則なんですね。「あ、来た……」っていう(笑)。
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←歌ってます。(『サイトトレイン』)
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大野:あれは歌うプランではなかったんですけど、外だったか体育館で練習してた時に、周囲がうるさくて音楽が聞こえなくって、しょうがないんでリーダーの子がやけくそで歌ったんですよ。そしたら、みんな自然に歌い始めてて、けっこうそれが良かって、「これ歌うんええんちゃうん」みたいになって。でもあんまり大きな声で合唱するんじゃなく、かすれてつぶやくように……、っていうところがポイントだとは、直感でピンと来てました。
アリ:そうそう、大きくないのが素晴らしい!
メガネ:やってみて良かったら、みんなそこでわーっと食いつくところが(笑)。多分そういったエネルギーが作品の核になるっていうか、部分になっていくんでしょうね。でも他のヒップホップとか踊ってる人たちも楽しくてやってるはずなのに、何かちょっと質が違う気がしますよね。
アリ:いや、全然違う。イメージがあるかないかの問題やから、ヒップホップは明確にイメージがあってやってるから。松山はイメージのありようがないものをやってるから、すごい……。
大野:作品って、目の前で起きてる現象だけ見てもらっても「あぁ、そうですか」っていう感じじゃないですか。そこで辛い顔されても、「あぁ、辛いんやね」って思うだけやし(笑)、でもやっぱり見てる側のナマの妄想とか空想とか、イマジネーションが動いてしまうと、もうどうしようもないじゃないですか。見てる人が100人いたら100通りの人生が見てる人にもあるわけで、その人の扉がパカッて開いちゃうと、もういろんな思いが止められなくなってしまう。こうなっちゃうと、「あぁもうやめて……」みたいになって(一同笑)。作品のシーン創りって、見てる人のイマジネーションの扉を開ける仕掛けをどれだけ置けるかだと、私なんかは思ったりしますね。
メガネ:たかだか、大学生くらいの20歳くらいの人が作品の中にそういうものをたくさん置けるっていうのが、ほんとにすごいですよね。
大野:自分たちで分かってやってることと、なんで思いついたのか分からんっていうことの両方がありますからね。
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