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閧の声が聞こえる 平加屋吉右ヱ門
 大阪城ホールの石垣の中、大きなスペースを区切った伽藍とした空間。響く足音。
若い男の部屋、そこに住みついた亡霊たち。
他人の部屋に住みついている。私たちの形をした何か。人の形をした何か。全て万歳一座とその座員たちのこと。OMSを出てから新たな場所を探し、辿り着いたのがこのウルトラマーケット。自分たちのものだと思っていた場所から、自分たちで手に入れた場所へ。

 まさにこの部屋は劇場で、劇団がそこに住む住人。その部屋の窓も柱も扉もカビの生えた壁も。「ただのもの」「只のもの」ではなかった。「特別なもの」。その部屋に残された様々な痕跡はそれまでにそこに「住んでいた」人々の暮らしを、出来事を、想像させる「生活」「活動」の匂い。

 若い男の引越しを追って手紙が届く。押入れに中年男が眠っている。押入れから出てきて「野菊の墓」のビデオを見る。そこへ4人家族が自分の部屋としてはいってくる。つぎに応援団の学生が二人。実は一つの部屋に何人もの人が住んでいた。若い男はこの部屋を自分の部屋であると主張する。部屋というのは金さえ払えば誰でも受け入れる「陰売女」か、やさしく愛してくれる「吉原の太夫」か。この部屋に住むという若い男は部屋の敷金や家賃を支払っているという事実から、そこが自分の部屋であると主張する。しかしそれを証明できるのは、自分を追ってきた手紙だけ。

 時間がただ過ぎ年老いていく。自分は何だったのか。なにもないよりましだからと、非難されても人の手紙を読む。狭い舞台の中で大勢の役者による激しい動きが続く。詩情あふれる台詞。男たちの裸のシーン。万歳一座の十八番。

 劇の冒頭、色とりどりの模様のマントを身につけた男や女。それを部屋の柱や鴨井に飾りつけ、自分たちの部屋にしていく。まさに、万歳一座のトレードマークの継ぎ接ぎの大きな緞帳。次第に大きな舞台へと進出するのにつれて成長させてきたその緞帳。この緞帳をかけた場所を自分たちの舞台にしてきた。
新しく彼らが始めた拠点としてこのウルトラマーケット。新たな一歩の閧の声がこの劇である。


キーワード
■柿落とし ■出発
DATA

同公演評
新劇場に表明する継承の意思 … 西尾雅

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