プロを育てたい
—と、話が脱線ばっかりしてすみません。
ところで、って本題ですけど、澤先生は現在お教室はお持ちじゃないんですか?
澤「持ってないんですよ」
—お持ちにはならないんですか?
澤「教室で教えていた時期もあったのですが、今はプロになりたいような人だけを教えています」
—しかし、そんなに簡単にプロにはなれませんでしょ?
澤「だから、プロになりたい人を応援したいと思って…」
—先生の所にお稽古いらっしゃる方は、始めに歌を習うのですか?
澤「それは色々です。人によって教えて貰いたいものが違うのでそれにあわせて教えます」
—あの妙な間の伸ばし具合とか、もの凄く難しそうですよね。
澤「(笑)妙ではないんですけどね」
—(笑)あの、うーと伸ばした後、いつ次の言葉言うのん?みたいな、メトロノームがあってリズム取る訳ではないですし…あの間は、アーティストの方の感性で伸ばす音なんですか?
澤「あのきっちりと五線譜で表現されない間がいいんやと思いますね。
教える時はその基礎はちゃんと入ってないと駄目なんですよ。
それが出来るようになった者が、その範囲の中で自分の感性で表現する。
楷書が書けないと草書が書けないみたいなね」
—でも、そこはある意味、古典の醍醐味ですよね。私はその昔、初めて歌舞伎を見た時、花道でおこついて(つまづいて)、ふったらふったらしてはるのを見て、何してはんねやろ?いつ引っ込むの?(笑)と思った記憶があります。
今となっては、その「うー」とした間の時間こそが、一番とも言える楽しい時なんですよねえ。もう気持ちは「たっぷりと」ですが、初めて見た時は、それが楽しみになろうとは思いもよらなかったですけどねえ(笑)
先生は、三味線とお琴と胡弓とか、もちろん全部教えはるんですよね?
澤「はい。三味線とお琴と胡弓と十七弦(じゅうしちげん)と唄と…色んなものを教えます」
—すみません先生。十七弦がよく分らないのですが…
澤「お琴は十三弦でしょ?」
—はい。
澤「あれが17本になっていて大きいんです。低音のベースみたいなの。
これは宮城道雄さんという方が考案したもので、高校生からしてましたけど」
—今、澤先生の所にお稽古にいらっしゃっている方は、皆さん元々どこかでそれなりに経験されていたことのある方なんですか?
澤「殆どそう。2、3年前に1人だけ学校の先生で、私のHPを見て、“今後学校の授業に邦楽があるので”というメールを下さった方がいて、それでお目にかかったんですね。そうした方は初めてですね。
後は大抵、演奏会で私の演奏をご覧になって楽屋に訪ねて来られてですね。
—楽屋に訪ねて行くだけでも、それは凄く勇気のいることですよね?
澤「そうですよね〜。でも、それ位の人でないとね。
って、なんか全然役に立ちませんよねえ(笑)〜」
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