地歌の魅力、創作地歌「曽根崎心中」の魅力
—今度「大阪人になろう」の吉村古ゆうさんに舞って頂く地歌の「曽根崎心中」は、澤先生がお創りなったものですが、ああいう創作というのはあれ以外にも数々手掛けられているんですか?
澤「“こんな曲に作って”とか言って、舞踊家の方が頼まれるんですよ。
10年位前からあまり気は進まなかったんですがはじめたんですけど…」
—あれっ、嫌々なんですか?
澤「だって、自分で曲創るなんて“グフッ”って感じじゃないですか?恥かしいわ、みたいな(笑)…。詩は書いたり、貰ったりですけど…。
10年くらいの間に、年に1曲とか2曲とか創って、今全部で20曲位になってしまいました」
—創作地歌「曽根崎心中」の歌詞は先生がお考えになったものですか?
澤「いえ。あれは殆ど浄瑠璃をそのままにです」
—先生のご意志で地歌にされてみたいと思われたのですか?
澤「そうです」
—それは大阪の物だからですか?
澤「とにかくあの文句…、よく出来ているじゃないですか?素晴らしいなあ〜、と思おてねえ。言い回しとか。
こういうのが曲としても有ったらええのになあ〜と思おてね。
探してみたら“ない”ということが分ったので創ったんです。日本人らしいひたむきな江戸時代の恋愛を、私なりに地唄にしたいと思ったんですね。
追い詰められた哀しさとか、死を覚悟した美しさを、歌、三味線、胡弓、十七弦の構成で作曲したんです」
—これは浄瑠璃の素晴らしい歌詞をご存知の方も多いと思うので、地歌で聞かせて頂くのは楽しみですね。
澤「地歌の魅力っていうのはね、その時代のひたむきさというか、風情というか、美しい日本語であったり、そういうのが味わってもらえたらええなと思うんですよ。地歌も多分、もっととっつき易かったりしたら、本当は多くの人にも親しんで貰えてるんやろうし、面白かったら“やるな”と言ってもしてるんだろうけど…無理にとは言わないけど、とっつきにくいと思って敬遠してる方は、お願いだから一回は聞いてみて、とは思います」
—地歌って、シンプルな分、深いですよねえ。
澤「だから難しいんですよ。シンプルな分」
—解る気がします。でも、だからその良さもある。
アカペラの童謡が何気にジューンと心にしみて感動したりしますもの。
澤「そう。バァーッとした派手さがない分、深くて、心に沁みる良さがあるんです」
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