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小粒のメセナ?個人の趣味?アートを支える多層なアクターに突撃
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+ 辻 牧子
株式会社プラネットワーク勤務/神戸アートビレッジセンター1階にあるコミュニティースペース「1room」を企画運営奮闘中


#5:(株)レイコフ×奥山泰徳

○はじめに
『場を動かす』株式会社レイコフ×奥山泰徳

本コンテンツでは企業とアーティストやアートプロジェクトに関わる方にインタビューを行い、あまり人目につかない層での、協賛・協力関係にある双方のゆるやかなつながりをレポートさせていただく。タイトルのマイクロロジー(「つぶさにものをみる、微視的観察」を意味する英語)的精神で、個別のインタビューを通してさまざまなすきまに入り込み、社会の中のアートの日常的風景を切り取ることができればと思っている。
さて、今回インタビューに応えてくださったのは、株式会社の桑原誠二さんと、有限会社アートニクス代表の奥山泰徳さん。
お二人の関係は、レイコフが大阪船場にもつ順慶ビルをリノベーションするに当たり、桑原さんが9年前から同地で「コンテンツレーベルカフェ」(以下「コンテンツ」)を経営してきた奥山さんに声を掛けたことから始まった。
ところで、レイコフが行うビルのリノベーションは、単に建築的作業に留まらない。テナントのセッティングなども含めた、建築物や土地の価値を「不動産」から「動産」に変える取り組みである。つまり、レイコフのコーディネーションによって所有するビルに付加価値を付け、そこに複数の投資家の投資を呼び込み利益を生み出していこうとするものだ(不動産の証券化)。中でも、順慶ビルは「都市内部からの再生の試み」である都市再生プロジェクトの第一弾であり、担当の桑原さんがアーティストやデザイナーが集う場にすることで付加価値を高めようと考えた。
そこで奥山さんは、 「コンテンツ」でさまざまなアーティストとイベントなどを仕掛ける一方で、グラフィックや内装のデザインも行ってこられた奥山さんならではの幅広いネットワークを活かして、新規入居者の紹介とオープンハウスのイベント「re:birth 」(2005年1月29日〜2月12日)の仕事を受けた。
多くの作り手が「安くて、自分の時間が確保できて、交通の便が良くて、情報が集まって、刺激的な人と出会える」制作場所を望みながら、値段との兼ね合いから静かで広いけど「交通の便が悪く、人と滅多に会えない」ような場所に落ち着かなければならないのが現実だから、こうした場所ができることは朗報だろう。
しかし、逆に考えればアトリエも満足に手に入れられないぐらい生活をやりくりするアーティストが多い中で、どうしてそれがビル、場所の価値を高める(貸し賃が高くできる)こと、または企業の利益になるのだろうか?
「企業」・「アート」それぞれの要素をめぐって、関わったお二人のそれぞれの考え方を紹介したい。

*今回は順慶ビルのプロジェクトについて御理解いただきやすいように、レイコフ桑原さんのインタビューを前半にしています。
 

 

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