小粒のメセナ?個人の趣味?アートを支える多層なアクターに突撃 |
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桑原誠二さん(seiji kuwabara)−設計企画部長
1965年 広島県生まれ
京大建築学部、東大大学院で「都市解析」を専攻した。鹿島建設株式会社から(株)レイコフに転職し、現在はレイコフ内の事業会社(株)レイコフインベストメントで働く一級建築士。趣味は、スキューバーダイビングと水中写真。
○株式会社レイコフ
関西を拠点に不動産証券化ビジネスを核とし、アセットマネジメント・不動産鑑定評価・コンサルティング・直接投資等を行う企業で、(株)不動産計画評価研究所、(株)資産管理研究所、(株)レイコフ投資顧問、(株)レイコフインベストメント専門性の高い4つの事業会社から成る。
所在地:〒541-0048 大阪市中央区瓦町3丁目5番7号 大阪長和ビル9階
http://www.reicof.co.jp/index.html
インタビュアー(辻・以下「T」)−
本日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございます。順慶ビルのプロジェクトについて伺う前に、レイコフさんはどのような業務を行う会社なのかを伺えますか?
桑原(以下「K」)-
我が社は平成元年に現社長によって設立された会社です。私達は日本では所有するものという感覚が強い「不動産」を、投資の対象として取り扱っています。複数の投資家から資金を集めて、運用を私達に任せてもらいそのリターンを投資家に還元することで不動産の再活性化を促そうとしています。
T−
では、従来の不動産業よりも投資信託業に近いといえるのですね。私には、あまり耳なれないお仕事のようですが。
K−
海外ではかなり以前から、東京でも、ここ数年このような動きや同じような仕事を行う会社が増えてきています。
しかし、関西に本社を置くのは我が社だけだと思います。 関西では、不動産の取引サイクルが東京ほど早くはないので、まだ広く知られた仕事とはいえないかもしれません。
T−
順慶ビルも投資の対象として同様の運用がなされているということでしょうか。
K−
いえ。オフィスビル、賃貸マンション、ホテル等の収益物件を対象に自社資金を使って不動産の新しい活用方法を提案する業務の一環ですから、順慶ビルは南船場レイコフプロジェクトとして我が社が直接買い取ったものです。既存のビルの一部の改修工事と新しい層の店鋪や利用者を呼び込むバリューアップを行うことで、南船場という街の新しい側面をつくり出すための最初の取り組みです。
T−
南船場はもともと繊維問屋の立ち並ぶ個性的な街ですが、なぜこの場所をプロジェクトの対象になさったのですか。
K−
私達が検証を行った結果、 南船場は確固たるイメージがあるゆえに、大阪のへそに位置しながらも産業構造の変換にあまり対応できていないのではないかとの見方が出てきました。バブル崩壊後に近隣の堀江などは、新しい店鋪や住人が入りだし、これまでの「家具問屋街」にとどまらない動きをもつことができたのに対し、空きビル、空き店鋪、空き部屋が新しい産業によってうまることができずにいます。
T−
産業構造の変換に対応できなかった要因は、何だったのでしょうか?
K−
堀江などは問屋などの衰退が早かったのに対し、船場はそれが緩やかだったため、新業態の参入が進まなかったと考えています。また船場には体力のある優良な企業さんが多く、商店街の繋がりもしっかりしていたこともあると思います。でも、一時期の土地の高値化で以前のようにこの街に住む方はほとんどおられない。そのため昼と夜、またウィークデイと週末の人口が極端に異なります。
T−
確かに、船場は問屋さんがお商売をなさっている平日の午後5時ごろまでは4、50代の女性客、近くのオフィスに勤務するビジネスマンが多く行き来しています。ですが、それ以外の時は近隣の飲食店も周囲のサイクルに合わせていますから、立ち寄れるところがあまりないですね。
K−
今回、アーティストやデザイナーを中心として順慶ビルの入居者を募ったのも、彼らの生活スタイルがこの街の人口のアンバランスを変えてくれるのではないかと考えたのも理由の一つです。
T−
夜中に仕事をされることの多いデザイナーや、兼業していて夜にしか時間のないアーティストが活動することで、この街の時間サイクルの雰囲気は変わるのでしょうね。
K−
彼らの多くは「職と住」が離れすぎていないと感じています。 順慶ビルにどっぷり住み着いてしまうのでもなく、かといって仕事のためだけに立ち寄るのでもない人たちを集めたかったんですね。彼らは、仕事だけ、遊びだけでない空間をつくり出してくれるのではないかと。
ビルで生活の全てをまかなうことはできませんので、むしろ、ビルを基点にいろいろなタイプの方が街に出入りするようになることが、このエリアに新しい風を吹き込むのではないかと考えています。
T−
ビルから10分も歩けば心斎橋、東急ハンズがあったりとかなり便利な場所です。人が足を向けるきっかけを、アーティストやデザイナーの拠点的なポイントを作ることで呼び覚まそうということですね。
K−
順慶ビルが立つ堺筋は御堂筋が栄える前は、大阪の動脈としてもっとも栄えていました。そういった思い入れや歴史的な建築物が多くみられる点でも個性的な場所なんです。だから大通り沿いは大企業さんやチェーン店が立ち並ぶのもしかたがありませんが、見えにくい形で進行する街の空洞化は、ポイントとなるようなビルをエリアの内側に点在させることで解消しようというのが、南船場プロジェクトです。古くなったビルでも、上手く再活用することでビル自体のイメージは十分にアップでき、街のイメージも転換することが可能だということ、そして、ゆくゆくは地価の上昇と賃料の引き上げにつながるのだということを、プレゼンテーションする場としても順慶ビルは最初の事例として押出していこうと考えています。
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