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日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


22 読解できないもの その1

作品紹介とインタビューによる「あなたのダンス」4
『晩餐室』ゆみ・うみうまれ+モイラ・フィニケーン+ジャッキー・スミス


 
 
 
オーストラリアが移民によって開拓された時代の様式?大きな三面ついたてで表した小部屋の片隅に、白いドレスの女が生気なく座っています。その背後の小窓に黒いドレスの女が張りついて、長い指で部屋の中の白ドレスの女となにやら交信しようとしている様子。やがて黒ドレスの女が部屋に入り込むと、白ドレスの女も目を覚まして動きだし、2人して白目を向いたり、不気味に笑ったりしながら、だんだんに壊れてゆきます。衣装のせいか、ジェーン・カンピオンの映画『ピアノ・レッスン』の時代が背景として思い浮かび、その路線で解釈するなら、貞操帯をつけられ部屋に閉じ込められた女性たちが身体に溜め込んだ情念が解放される響宴を覗いていることになるのでしょうか。それにしても、その解放がいかほどに強く恐ろしいかたちをとるか。お互いの衣装をはずし合うと、同じ白のイブニングドレスを身につけた2人の体が双頭の動物のように絡み合い、ワインをがぶがぶ呑ませあい、鍋の中のチキンにフォークを突き立てて、「ぎゃ〜〜〜〜〜〜!?」。観客の心の叫びも笑いで解放させるような、ぞくぞくする作品でした。


 
 
 
+異なるバックグラウンドのお三方が一緒に活動されるようになったきっかけは?

ユミ:モイラとわたしはお互いに、隣を見るといつも、なぜかそこにいるといった存在でした。お互いを意識したのは、1999年にメルボルンのフリンジでパフォーマンスをしていたときです。わいわいやっている他の人たちの中、2人とも楽屋の角で集中していたし、最終的に2人とも賞を取ったということもあり。そのうち、作品にも通じ合う点があることに気づきました。

モイラ:お互いにつくった作品を見て惹かれ合ったんです。パフォーマンスのパワーやエネルギーにね。それに、観客が自分の作品に対するのと似たような反応をユミの作品にも示しているのも面白かった。

ユミ:モイラの作品は、怖いけど愛を与えられている感じなんです。私も「ショックと癒しがクロスする」と銘打った作品をつくってきましたが、モイラも自分と同じようなパワーを感じたんですって。そういった部分でも、横を見ればパラレルワールド(笑)。

2003年にモイラに声をかけられて、2人がつくったviolence hourで世界各国75公演廻りましたが、その過程で、直感が当たったことがはっきりわかりましたね。例えば、モイラが私の着物の踊りを振付けたことがあるんです。普段なら日本のことを知らない人に言われると腹のたつほうです。「クロス・カルチャー」とは簡単に言われてしまうけど、本当にその国に行って生活しないとわからないことがある。でも、彼女が言うことは受け入れられたんです。本質的な部分を突いていたから。おそらく、日本の古典や伝統にこだわることを越えて、人間として人を見ていたからでしょう。普遍的なんですよ。そのときに、この人たちに日本を見てもらいたいと思いました。

モイラ:普遍的な意味について言えば、香港を皮切りにニューヨークや日本で違う観客に触れたことで、そういった部分で通じるという確信が持てました。

ユミ:ジャッキーとモイラは細かいことに注意を払いたい人たちで、例えばこの作品は、狂気、喜び、いろんな感情のひだに分け入るんですけれど、その中でお互いに手を伸ばし合うところで感じる悲しみは、憶えておかないといけない、と。そういった感情に関しては、日本もオーストラリアもありませんよね。でも、私みたいに一日本人がオーストラリアで活動するというのは、やっぱり大変な世界なんですよ。だからこそ、日本人だからエキゾチックで売れるといった表面的なことじゃなくて、人間としてものを見ている人に遇えたことが嬉しかった。

+ユミさんが、その「大変なところで」活動されるようになったきっかけは?

ユミ:私は大駱駝館というカンパニーで育って、そのことは今でも大切にしているのですが、いつかはそこを離れなくてはいけないと思ったんですね。というのは、結局は、舞踏でも土方巽でも、自分個人のことを突き詰めてきた人なんですよね。国際的という前に、個人主義を窮めている。個人主義という点ではモイラもジャッキーもそうなんだけど、日本でそれが難しいのは、本当の個人主義っていうのはないですからね。日本だったら学んだ延長でやっちゃうかも知れないけど、ここだと彼らみたいな人たちが、学んだことでなくて、自分のことで活動している。もちろん、こんなことも後日談として言えるのであって、私はそういったことが、外に出てはじめてわかりました。結局このアートの世界の中で、自分が生きてるってことと自分を信じているということだけが認められるかな、と。

ゆみ・うみうまれさんのホームページはこちら>>>http://www.yumi.com.au/

※special thanks for typing and translation to 藤田一さん、ユミさん

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