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日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


2008年4月号「踊りに行くぜvol.8 SPECIAL IN OSAKA」



制作者インタビュー(2) 小倉由佳子
■ 企画にあたって大事にしていることなど

神澤:企画をされるときは、どういうところから案が湧いて来るのですか?

小倉:私の場合は、まずアーティストありきです。企画を立ててそれに当てはまるアーティストの人を探すという感覚は、私にはあまりないかなと思います。もちろん、そういうことも考えていかないといけない場合もありますが。この人面白いな、一緒に何かやりたいなと思って、お互いに話して案を考えるタイプかなと思います。もちろん、いろんなケースがありますが。

 作家の古川日出男さんとミュージシャンの向井秀徳さんのセッションは、もともとおふたりの本と曲がすごい大好きで、そのふたりが「東京でセッションをするらしい」というのを知って驚いたのがはじまりです(笑)。えっ! と思って、そのノリで主催者の方にメールを書きました。「京都でもやればいいのに」みたいなことを。そうしたら、その方もそれぞれふたりにコンタクトを取って実現したから、京都でやりましょうって提案してみては? と返信が返ってきたんです。そうして、一度も会ったことがないその方を通して連絡して、とんとん拍子に話が進んだんです。びっくりでしょ(笑)。
 

 
神澤:すごいですね。「私がやります」と書いたわけでもなく?

小倉:でもなく。一応自己紹介的に、こういう仕事をしていて他のジャンルにも興味がありますみたいなことは書きましたが、それよりこの企画を見たときの驚きを。だって、本当にびっくりしました。なんとなく、作品性もつながってるなぁと思っていたふたりだったし、個人的にも、運命だって思ったんです(笑)。というのも、アイホールの常勤スタッフをやめて、自分の将来を悶々と考えていた時期に、古川日出男さんの本を読みながら、ZAZEN BOYSの曲を聴いていたりしたので。その曲と本、自分の生活、いろんなものがガーンってリンクして、これはやらなくては! と思ったんですよね。この企画は、結構、私の流れの中でのポイントかもしれません。自分が好き、いいと思っているアーティストと一緒にやるという原点。

 アーティストありきでつながりが大事という点は、Linksの企画にも通じるところがあります。Linksは、1人のアーティストがやりたい人を指名して、そこで一夜限りのセッションをして、その次は、指名された人が新しい人を指名していく、「アーティスト数珠つなぎ」企画です。京都で同じく制作の仕事をしている森真理子さんと一緒にやっています。始めたときは、ジャンル、ボーダーレスなことと、自分たちが知らないアーティストに出会いたいという気持ちがありました。自分の枠の中でしか考えられなくなっていたこともあり、同じ人ばかりにしか注目できなくなっていました。でもアーティストが指名していくっていうことになると、自分が全く見たことがないような人を知る可能性があるじゃないですか。類は友を呼ぶじゃないですけど。それがおもしろいなと思ったんですよね。つながりは作っていくものだと。セッションが上手くいくかどうかの博打的要素が強いので、そういう企画はそうそう劇場では出来ないですよね。そもそも一回も見たことがないアーティストを呼ぶなんて、それまでの仕事では考えられなかった。でも、ライブハウスだったら逆におもしろいかなと。結果、セッションの相性があまり良くなくまとまりなく終わっても、それはそれでおもしろいと思う気持ちさえあります(笑)。本当に嬉しいことに、素敵なアーティストばかりのLinkが続いています。


 
  アーティスト数珠つなぎセッション「Links」岩下徹×梅田哲也京都/アバンギルドphoto:Toshihiro SHIMIZU
 
■ 今後の活動に向けての抱負など
 (4月1日のアイホールディレクター就任を受け、追加で答えていただきました)

小倉:アイホールでは、学校などの劇場外にアーティストと一緒に出かけて行くアウトリーチ事業や、地域のシニアと新鋭アーティストが一緒に舞台を創作するプロジェクトの準備をはじめています。まだリサーチの段階なのですが、いろんな人々や表現が交差するような場を作っていければと思っています。当面は、そういったシニアとの舞台創作プロジェクトや教育現場へのアウトリーチ事業の準備、リサーチ期間です。

 よく「コンテンポラリーダンスや現代演劇は難しくて分からない」と言われしまうことがあります。でも、話を続けて、「どうして見に来られたのか」とか、「どう感じたのか」と糸口を見つけていくと、様々な感想が出て来たりします。たとえ、「分からないけど」がはじまりでも、一緒に話したり、考えたりできるように、ワークショップやトーク、レクチャーなどを織り込みながらやっていきたいと思います。とにかく、いろんな人々、表現、価値観が出会うように、アーティストだけでなく、観客、様々な立場の方々を巻き込ませていただきながらやっていきたいと思います。



小倉由佳子(おぐら・ゆかこ) 
1976年生まれ。神戸女学院大学卒業。2001年から2006年6月まで、アイホールのダンス担当者として勤務。退職後、フリーの舞台制作者として、ダンスを中心に、演劇、音楽も含め、様々な公演、イベントに関わる。マレビトの会(代表:松田正隆)、Rissei Show(主催:NPO法人京都舞台芸術協会)、アーティスト数珠つなぎセッション「Links」など。2008年4月よりアイホールディレクター。

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