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 犬島・島食堂のおばちゃんら、元気にカレー作りよるかいね? 郵便配達の兄ちゃん、汗びっしょりかきながら自転車で走りよるかいね? じいちゃんとこの夏みかん、ぼってりなっとるかいね? 猫の子、大きなったかいね? 朝顔のツル、伸びよるかいね? 海、待っとるかいね? 島の子、帰ってくるん、待っとるかいね? 暑中見舞い申しあげます。
 昨年夏。維新派は瀬戸内海の小さな島、犬島をまるごと舞台にして公演『カンカラ』を打った。島にオレンヂ色の夕陽が落ちる時刻。それが開演の合図(台本にも、そう書いてあるのだ)。天井のない野外舞台には、雨の神様、風神様、雷神様も飲めや歌えや、容赦なく、野外舞台に駆けつける(ほんまに容赦なく、ザーザー、ゴロゴロ、ピカピカ、駆けつけてくれる!)。そして夜毎に月は、カタチを変え、位置を変え、絶妙の舞台芸術を見せてくれる。
 「月には、勝てん」。2000年の大阪・南港しかり、01年の奈良・室生村しかり、02年の岡山・犬島しかり。舞台後、うまそうに酒をあおる維新派の主宰者・松本雄吉から、私たちは何度、その言葉を聞いただろうか。月には、勝てん・・・。そして、03年。東京・新国立劇場。屋根がある、幕がある、空調がある。維新派、野外劇から一転し、月のでない“劇場”での公演が行われる。サブタイトルは「月下の歩行者」。松本雄吉は、東京でいったい何をやらかそうとしているのか。「劇の宇宙」編集長・小堀純との会話から垣間見る。

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