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日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


04 空腹の技法 その1 坂本公成

<普通にあるものをなくしてみる>

坂本:そういう体験をして帰ってきて、京都で前に演劇をやっていたメンバーと、 モノクローム・サーカス (*1)を立ちあげました。集まったのは写真をやっている人と、もう1人は建築をやろうとしている人だったので。それで、1回演劇をやってたら当たり前にあるものを削ぎ落としたところで何ができるかっていうのをやってみよう、と。例えば場所は劇場じゃなくて、京大の文学部に、今は「ブンピカ」と呼ばれているところがあるんだけど、—文学部控え室で「文控」(笑)。今でも演劇とか時々やっているみたい。—そこに篭もって、いわゆる舞台だと普通にあるものをないことにしてやってみよう、と。例えば脚本をなくす、劇場をなくす、照明をなくす…。その時、建築をやっていた川北っていうのは、ものの配置によっていろいろな意味を伝えられないかなって考えていた。僕のほうは、動きだけで何かできないかと思って、パリでの体験ももとにして、ゆっくりスローモーションで動いてみたり。照明をなくしてやっていたんだけど、普通の文学部控え室だから、窓を遮っても外光が漏れてて、それがきれいだったりしたのね。照明効果というか、光と闇の効果みたいな。音も、ちょうどそのころ野村誠くんと脇坂っていうミュージシャン2人に出会って、音つけてもらったりして。

メ:そうやってゆくと、一つ一つの要素が検証されてゆく。

坂本:そういう感じかな。音響なくてもラジカセで音出るじゃんって。もちろん空間にも目がいくことになるんだけど、ブンピカは中庭に面して窓がある教室で、反対側のドアを開けると廊下があって。実際にやったのは、廊下をドタドタ走ってるだけ、観客は中にいて外で走っている音を聴いているっていうシーンとか、あるいは脇坂くんが作った音をラジカセで流しながら外の廊下をゆっくり歩いて近づいてきて、ドアを開けて入ってくるっていうこととか。あと光っていっても、日常にあるもので作れるなって。例えばライターも面白くて、すごく暗い中で点けるとふあーっと光が拡がってきれいだったり。そこにあった脚立にライターの火をかざしたりすると、天上も低いから影が映えて面白かったりとか。とにかく、1回目の公演では今から思えばすべてを…ミニマルな状況にしてみて、何が起こるかっていうことを実験していたのね。
 それで2回目くらいになると、山下残くんとか白水俊子ちゃんが面白いって入ってきてくれて。残くんなんかも「これはダンスだ」とか言って(笑)。それで少しメンバーが増えて、その時も同じ文学部控え室でやった。窓にホースをつけて水をずっと垂らすようなことをして、窓枠4つにダンサーが3人立ってて、そこから漏れてくる光が逆光になってるんだけど、そこでライターを点けるとわーっと照らされて。あと、ものの配置だけで意味を変えるって、建築の川北が提案したんだけど、中庭にビニールテープを伸ばして張り巡らして、パフォーマーがそれを持って変えてゆくといったことをやったり。蛇口もあったから、水も流してて、中庭のコンクリートの部分に水が満ちてゆくようにしたり。
 そういうことをやって、今までの演劇でされてきたことを削ぎ落としてみると、光とか音の存在だったり、空間、体の存在だったりっていうのが見えてきた。そして、当時他のジャンルでやっている人たちで、空間とか体とコラボレーションしたいと思ってた連中がいろいろ周りに集まってきた。

(*1)モノクローム・サーカス
1990年にパフォーマンスのグループとして発足。メンバーの交替などを経て、1998年頃ダンス・カンパニーとして再出発。その作品には、「暑い夏」で吸収したコンテンポラリー・ダンスの手法や考え方、とくにコンタクト・インプロヴィゼーションとの息の長い取り組みから得られた体の使い方、コミュニケーションに対する洞察がこめられています。詳しくはホームページをご覧ください。
→http://www1.neweb.ne.jp/wb/hot-summer/mc/


 
  一番新しいモノクロームサーカスの公演9月24日 15:00-/19:30-  9月25日 15:00-京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター上演実験シリーズvol.24“Refined Colors”Dance Performance + Workshopディレクション/照明=藤本隆行(dumb type)演出/振付/出演=坂本公成(Monochrome Circus) 振付/出演=森川弘和・佐伯有香(Monochrome Circus)振付=森裕子(Monochrome Circus)音響/ヴィジュアル・デザイン=南琢也(Softpad)音響/プログラム=真鍋大度主催・問い合わせ:京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター〒606-8271京都市左京区北白川瓜生山2-116tel 075 791 9437 fax 075 791 9438e-mail info@k-pac.org
 

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