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日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


04 空腹の技法 その1 坂本公成

<「収穫祭」プロジェクトの展開>

坂本:「出会いを収穫する」っていうことを考えていろんなところに行くときは、かなり美術の領域で、しかも海外が多かったんだけど、続けているうちに京都でも知られるようになって、いろんなところから電話が入るようになって。そんな風に拡がりがでてきて出前を続けているうちに—いつ頃かな—、さらに考え出したことがあって。ひとつは、出会いを求めていろんなところに行くんだけど、それを体験するのって、結局僕らだけというか、呼んでくれたお客さんと僕らだけの間だなってこと。結構いいことしているような感じはしてるんだけど、それをその場に居合わせなかった人たちに伝える機会っていうのはなくて。もうひとつ、できれば出前で会っている人を、僕らが呼び返したい、呼び直したいっていう欲求が出てきた。たとえばある地域に滞在して、そこをベースにあちこちいろんなところに行くのだけど、その先で出会った人たちを、今度は僕らが呼びたいっていうことで、まあパーティー会場でもいいんだけど、最後に場を設けて僕らも招き返すっていうことを一連のプロジェクトにできたらなあって、いつの間にか考えるようになっていて。それで2001年から2002年にかけて、そういうことがどうやったらできるか探り始めた時期があって、劇場版『収穫祭』もそういったところで考え始めたの。それが明解なコンセプトになって、その手法も完結したかなと言えるのが、2003年の芸術センターと一緒にやった『大収穫際 2003春夏秋冬』。


 


 
 
 
左は京都の芸術センターで催された『大収穫祭2003』、右は劇場版収穫祭ともいうべき『Float』の東京公演のチラシ。(ともにdesigned by Shimizu Toshihiro)それまでに「収穫」されたエネルギーと関係性が、この前後に驚くほど成長を遂げたダンサーたちの踊り、楽器演奏、語りかけやドキュメント映像とともに綴られた、心洗われる作品でした。

 それで出前のやり方のピークを迎えたかなあって。アジアにも行って、そこで会った人たちも呼び返して、一緒につくって、プレゼンして。 ドキュメンテーションのやり方でも、メンバーが日々日記と写真をとっていて、それを日々ウェブで展開してゆくということもやった。そのとき僕の中、そしてメンバーの中でも明確になっていたのが、「出会いの循環を収穫する」っていうこと。
 で、この出会いの循環を収穫するってことからつながっているのが、今度11月に仙台でする、ワークショップと、劇場公演と、出前公演をリンクさせようっていう試み。はっきり「出会いの循環を収穫する」みたいなキーワードはないけど、今考えているのは、収穫祭を受け入れてくれる、受け口になる団体なり個人なりがいるわけで、その人たちと舞台を一緒に作りたいっていうこと。今度仙台でやるグループっていうのは、art standardっていう団体。子供たちの居場所を作る助成金っていうのを文化庁が出して、全国でそういう事業が行われてるらしい。その方向はいろいろあっていいみたいなんだけど、そのart standardはアートを介して子供たちの居場所をつくるって考えで、子供たちのアートスクールっていうのをやっていて、そのプログラムの一環で、僕らもワークショップと公演をすることになっている。そこで僕らが考えているのは、僕らが出前をしたことのドキュメントを舞台に置き換えるっていうことじゃなしに、その出前を支えてくれる人たちと一緒につくるっていうこと。その方法を、今編み出そうとしているところです。

メ:収穫祭の発展形の一つですね。今日はどうもありがとうございました。

今後の収穫祭の予定
「大収穫祭in仙台」
11月23日(水・休)@ビーブホール
問合せ:GROUND TEL:080-5563-9904 E-mail : art-standard0417@ezweb.ne.jp

「収穫祭in伏見」
11月29日(火)@京都教育大学 講堂
                           

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++インタヴューを振り返ってみてわくわくさせられるのは、坂本さんが踊ることから得た「信じられるかも」といった感触が、かたちをかえ、ふくらみつつ展開していく様子だと思います。けれども、彼という語り手を得て見事に紡がれた「収穫」のストーリーは、内にあるおもいを狙い澄まして展開したものというよりは、ダンスによって揺さぶられた何かを手がかりに重ねてきた、人の間に立つという営みを振り返ってみれば…といった結果にすぎないのかも知れません。「空腹の技法」のタイトルからはじまり、食べ物の比喩に終始するようで恥ずかしいのですが、こうなると何を食べるかが大事。2頁目とインタヴューの最後に、モノクローム・サーカスと収穫祭の今後の予定を挙げさせていただきました。これを手がかりに、踊る人も、踊らない人も、ダンスに”揺さぶられ”に行ってみませんか? 



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