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04 空腹の技法 その1 坂本公成

               
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++インタヴュー構成:編集メガネ                                
 初めてダンスに魅せられてから、東へ、西へ、ダンスにはずいぶん不経済な移動を強いられてきた。それはダンスがもたらしてくれる素晴らしい体験にもよるけれど、反対側から見てみると、空腹にも似た欲求に後押しされてのようでもある。砂漠での餓死寸前から、コンビニで何も欲しいものがなくて途方にくれるといった感じまで、空腹は姿をかえてわたしをダンスに向かわせる。

 けれども立ちどまって周囲を見渡せば、違うやり方で—たとえば選んだ種を蒔いたり道ばたで見つけた素材を料理したりして—、自らの糧を得るということを淡々と続けてきた人々がいる。現在、わたしの移動のベースとなるこの土地には様々なダンスがあり、また外からも流れ込んでくる。そういった土壌を準備した人たちは、どんなダンスの味を知って、そしてどんなやり方で自らの空腹に対処してきたんだろう。「空腹の技法」という言葉にインスピレーションを得て、そんな問いから出発するインタヴューを始めていきたいと考えています。

 第1回目は、関西のコンテンポラリー・ダンスのメッカともいえる、ダンスのワークショップ・フェスティバル「京都の暑い夏」と、ダンス・カンパニー「モノクローム・サーカス」代表の坂本公成さんにお話をうかがいました。坂本さんの通った跡には、ここには収まりきらない様々なダンスをめぐる営みが落っこちていて、それらはもちろん彼一人の力で生み出されたものでもないのですが、そのいくつかを辿ってもらった以下のインタヴューには、ダンスに関わっている人、そしてこれから関わりたいと思っている人にとっても興味深い空腹の技法が潜んでるのではないでしょうか。
 

 
<ダンスに向かったきっかけ>

坂本:もともとは演劇をやっていたんだけど、行き詰まってあちこち旅に出たことがあったのね。それでフランスに行った時、パリのポンピドゥー・センター前で、大道芸人の人たちがいろんなことをやっているってことは前々から聞いていたので行ってみたら、そこで日本人の女性でアリサさんっていう、もともとコンセプチュアル・アートみたいなところから始めて1人で踊っている人がいて。その人がやっていることを見て自分もやってみたくなった。演劇だと台詞などの媒体で人にものを伝えるのだけど、言葉を介さずに、体ひとつで表現している人を目の当たりにして、何ができるかわからないけど、僕もやってみたいと思った。それでポンピドゥー・センターの前で、1か月くらい、木になってました(笑)。地面にいっぱい落ちてる葉っぱに自分の影を映したりして。それから少しずつ動いてみたり、思いつくことを加えていったりして、最後の方はお賽銭も入ったりして(笑)。
 そうこうするうちに、日本に来たことのあるコンテンポラリーのダンサーが、「君の動きは面白い」と話しかけて来てくれたのね。それで、友達になった人がどうやって旅してるのかとか訊ねるから、結構貧乏旅行やってたので、駅で寝たりしていると言うと、「それはダンサーの体に良くない」ってことで、友達のところに泊めてくれて。そのときたまたま紹介された人が、ダンスフィルムとか撮ってるアーティストだった。パスカル・バエスって、日本でも結構紹介されている。そうして彼の家に転がり込んだら、その人を介してまたいろいろ知り合いができて。で、体ひとつで人々の前に自分を晒したときに、そういうところで友達ができたりとか、コミュニケーションがどんどん拡がることを体験して、体ひとつでそういうことができるもんなんやな、って思ったのが最初。それで京都に戻って、モノクローム・サーカスを作りました。

メ:それは演劇で舞台に立ったのとはどんな風に違っていた感じ?

坂本:演劇やってるときってのは、パフォーマーの存在の仕方でいうと、ある種守られている部分があるのね。テキストによって随分支えられているところがあるし、なんらかの媒介になるものがあって。今はそうじゃない演劇があるっていうのもよく解っているけど、僕が演劇をやっていたのは、脚本とか物語の存在が邪魔なものに思えてきた時期。言葉を離れたところで何か成立するんじゃないかって思っていた時期でもある。ロバート・ウィルソンの『イメージの演劇』って、Parco出版だっけ、そういうのが出ていた時期で、そういうものも読んでいた頃。ま、そういうプラス志向でっていうよりは、1度演劇に挫折したっていうことがあって、脚本を書こうとして書けなかったっていうのが大きいんですけれどね(笑)。なんか納得のいくものが書けないなと思って。
 とにかく直接のきっかけっていうのは、ポンピドゥー・センター前でアリサさんに出会ったこと。そこで自分で試してみたら、いろんな友達ができ、コミュニケーションの端緒になったっていう驚きとか、そういうところ。「これは信じられるかも」って思った。

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