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小粒のメセナ?個人の趣味?アートを支える多層なアクターに突撃
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+ 辻 牧子
株式会社プラネットワーク勤務/神戸アートビレッジセンター1階にあるコミュニティースペース「1room」を企画運営奮闘中


#4:やなぎみわ×株式会社モリヤ

○はじめに: 『アーティスト×技術者として』

本コンテンツでは企業とアーティストにインタビューを行い、あまり人目につかない層での、協賛・協力関係にある双方のゆるやかなつながりをレポートさせていただく。タイトルのマイクロロジー(「つぶさにものをみる、微視的観察」を意味する英語)的精神で、個別のインタビューを通してさまざまなすきまに入り込み、社会の中のアートの日常的風景を切り取ることができればと思っている。
今回インタビューに応じてくださったアーティストは、世界的に活躍するやなぎみわさん。「エレベーターガール」から近作の「フェアリーテール寓話」シリーズに至るまで、常に様々なボーダー(年令、生別、国籍など)を越えて、みる人の心の深部を掴むような写真作品を発表している。一方の技術者は写真加工を専門に行う株式会社モリヤの工場長の山口晃一さんと営業の島川豊一さんだ。「エレベーターガール」シリーズの頃から、やなぎさんの写真作品のアクリル加工を行ってきた企業の、現在の担当さんたちである。
私が、アートがさまざまなプロフェッショナルとの協力から成立する背景を面白いと感じたのは、やなぎさんの作品制作の話を伺ったことがきっかけだった。おそらくご本人にとっては何気ない会話の一部でしかなかったかもしれないが、作品の作り手ではない私にとって、アーティストがひとつの作品を作り上げるのに、いかに多くの「交渉」と「説明」を行っているのかという事実は新鮮な驚きだった。だから、やなぎさんにはいつか改めてこのことを伺いたいと考えていた。
しかし、インタビューをやなぎみわさんに依頼したところ、マクロであろうとミクロであろうと「企業とアート」という観点からは、もうひとつのインタビュー先となる「株式会社モリヤ」とのつきあいについて話すことはできないと言われた。
その理由は本文に譲るが、やなぎさんの問いからこれまでのインタビューを振り返ったが、改めて私が聞きたかったのは、企業とアートという枠組みから見る関係性ではなく企業、アートというそれぞれの土壌をもちながらも、いわば個人としていかに互いの技術と「やりたいこと」を理解し、向き合っているかを知りたいのだと、今さらながらタイトルの大雑把さに気付かされた。
だから今回のタイトルは『アーティスト×技術者として』。お読みくださるみなさまにもそのことを踏まえて、協力は多くあっても協賛を取り付けることの難しい、日本の状況を再認識する機会にもしていただければと思う。
 

 

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