
日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物 |
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+制作者として最近のダンスについて思われる所、気づかれたことなどありましたら。
大谷:時間軸をどうとるかにもよりますけれど、今年ちょうどダンスボックス10年なので、それで言えば10年前は、今話に出たようなちゃんとした劇場以外にやる場所っていうのがほとんどなかったんですよね。そりゃ本当に小さなギャラリーなんかはありましたけれど。コンテンポラリー・ダンス-とは当時あまり言わなかったですけれども-、あるいは自分の身体表現がやりたいと思っても場所があまりなかった。その時に、ダンスボックスのようなものができて、確かにシステムもできて、若いアーティストも出てきて、当初から参加していた北村成美とか、ヤザキタケシとか、クルスタシア、山下残、そういった人たちがなんとか食っていけるかその手前みたいな状況にはなってきたと思います。
同じく作る側の話で言えば、大学やスタジオから、ダンスボックスに出たいといってくる人が出てきましたね。あと、ここ5年くらいの話では、ダンスサーカスに応募してくる数がものすごい増えたんですよ。年間でサーカスにでれるのは50組で、それが3か月に1回として、その2回くらい先まで決まっている感じですね。また同時に、昨日のサーカスもそうでしたが、関西圏だけではなくて、地方や東京からの出演希望も増えました。海外からも、フランス、カナダ、韓国などから、ダンスボックスのことを聞きつけての応募例があります。底辺が広がってきたということは、いい意味で確かにあります。
一方で、内容については、身体能力が落ちてきているなという印象は受けます。身体性ではなく、身体の力。非常にアイディアはあるんだけれども、それを保証していく身体力がないから、頭でこねたものが多くなってくる。加えて、東京に行くとニューメディアを使った作品が圧倒的に多くなっていますね。それと比べると、関西はイスラエルと同じで、ニューメディア嫌い。(笑)先週もイスラエルに行って30本くらい作品見てきましたけれど、映像使ったのは3本くらいで、それも非常に古い使い方をされている。そのつながりで、ちょっと逸れますがイスラエルが面白いのは、今までに勅使川原三郎、伊藤キム、山海塾、みんなすごい評判をとったんですけれど、ダムタイプがうけなかったという話。
+頭の中でダンスをこねるという傾向は、ヨーロッパでも増えていると思われますね。
竹ち代:映画の話ですが、昔は親方に就いて下積み何十年という世界が、大きい劇場で上演する35ミリの土壌ではなく、8ミリカメラを用いることで表現が変わったという話を思い出します。あれは自分の表現を若い世代が手軽にかたちにできるという点で良かったのだけれど、それで長く続けられた人は少ないというか、小手先の表現では続かないというか…。マンガの世界でも、昔はアシスタントを経て作家になっていったのが、自分の画力そのままでデビューする新人が増えたときに、似たようなことがあった。先ほど大谷さんが言われた身体の力に欠いた表現が出てくるというか。それでいうと、ダンスという、なにはともあれ体をもとでにする表現では、遅れてそれが起こっているのかも知れませんね。
あと、制作してて思うのは、楽屋掃除しないで帰る人が結構いてはること。僕ら舞踏やっていたときは、白塗りで汚すのが当たり前なので、楽屋は来たときよりきれいにして帰るというのが、言われるわけではなくて、体に染みついてあったというか…。
大谷:それは伝統やね。
コンテンポラリー・ダンスを語るときによく、多様な価値観の時代に、多様な価値観の表現がある、それは自由な表現でよい、という言い方がされます。僕も一方でそういうことも言うんですけれど、一方で職人がいなくなっていることは確か。そして僕はアートというのは職人でなければいけないと思っている。思想的なことは自由ではあるべきだけれど、パフォーミングアートは客との関係の上に成り立つ表現なので、お客さんにしっかり見せなければならない。そのときに必要なのが一つは身体力だと思うんですね。それが全てじゃないけれど。
さっきからの話でつなげるとしたら、僕らはキャバレーでそれを身につけることができたと思うんですよ。言ってみたら、毎日旅に出るわけですし、一日に、本土-っていう言い方をしていたんだけれど-は2回、北海道は3回ですよ。そのたびに金粉塗り直して、それがしんどくてね。あとは、当時は港町がすごく繁栄していた時期で、遠洋漁業の船乗りたちが帰ってくると、船の上で使わないでお金持ってるでしょ。ポケットに札束を入れてきて、僕らが金粉で踊っていると、こう、体に貼り付けてくれるんですよね(笑)。あとはホテルで踊っていて、農協さんの団体で、おばあちゃんがこう、拝んでくれるとか(笑)。お客さんとの関係ということでも、本当にいろいろ経験しました。
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