なるほど。でも、中には“今日は英華さんが弾いてはるんや”って気がつく人もいるんじゃないですか?
英華「うん、それはそれで嬉しいよ。でも、それとこれとは話が別で、出来たら、私ら音だけで消えてたいもんね。かえって、そういうことをあまり意識せずに、もっと落語を楽しんでくださいって、言うことはあるよ。私ら、舞台袖の一番ええとこで落語聴かしてもうて、一番笑てるわけやからね(笑)」
笑てるんですか?(笑)
英華「私、ものすっっごぅ笑うよ」
へえ〜
英華「好きやっていうのもあるし、何べんも聴いてる噺でも、演者さんによって、息も違うし。もう、覚えるほど聴いてるから。ほな、若い子の噺聴いてても、“この子の声なぁ…、一年二年経ったら変わんねやろけどなぁ”と思てたら、久しぶりに会うたら、“おっ、ええ口跡になってるやん”って、高座降りてきた時に、“あんた、声良うなったなあ”って、つい言うてまうねん。あんまり楽屋でそんな言うたらいかんのかも知れへんけど、なんか褒めてあげたくなってしまって」
ああ、でも、いろんな人の噺を一番近いところで聴いてるプロの人に褒めてもらったら、そら嬉しいし、励みになりますよ
英華「そのかわり、嫌なことも言うからね、私(笑)」
(笑)だからこそ、褒めた時に、よけ嬉しいんやと思いますけど(笑)
英華「あ〜、言うてしもた〜(笑)みたいな」
ひゃははははは(笑)どんなこと言わはるんですか?
英華「向こうから“お姐さんどうでしたか”って訊いてくる時があって、“訊いてくるなら言うたろかぁ?”言うて(笑)。“立て弁で速くしゃべらなあかん時は、速くしゃべるんじゃなくて、一つ一つの言葉を粒立ててしゃべったら、速く聞こえるように、なると、思うよ?”とか言いながら(笑)。ほんまに速くしゃべってしもたら、何言うてるかわからなくなるからね」
ああ、でも、それ、ほんとにそうや
英華「そら、私の三味線かて、若い時はすんごい速いのよ。稽古もしてるし、手ぇもまわるんやろなぁ」
そうでしょうねえ
英華「そのかわり雑よぉ?(笑)。雑な回り方なんやな、やっぱり。弾(はじ)くところも、弾いた音を出さずに、弾いた、という行動だけでいくから、すごい速く弾けるのよ。でも、ある程度の年齢が来て、お稽古の方法とかが変わってきて、一つ一つの音を大事にしたりすると、そんなに速くは弾けない。で、心地好いテンポっていうのが自分でわかってくるんかなぁ…弾きながら、しっかり息が出来るからかもわかれへんけど…。若い時は息が浅いから、速く弾いて、自分で息があがってしまうねん」
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