log osaka web magazine index
<咲くやこの花賞>は、<女道楽>ではなしに、<寄席囃子>の継承とか、後進の指導が受賞理由ですか?

英華「林家トミのおっしょさんが、無形文化財に裏方として賞をいただきはってから、お囃子さんに賞をもらった人がいなくって、で、私がいただいたので、それで、みんながものすごぅ大事にしてくれはったん」

それまで何にもなかったんですか

英華「だいたい、目立つことがないでしょ。演者さんには(賞が)行くけど。で、たまたま、あの時期は、お囃子のほうの上のおっしょさん方が、亡くなったり引退しはったりでね。ちょうど、私らに時代が回って来て、テレビの露出度であるとか、舞台へ出てのお囃子紹介であるとか、そういうのが、ものすごく増えてた時でね。新聞とかにも、よう書いてもうてたし。それで憧れて、お囃子さんになりたい言う子ぉがたくさんいた時分やった」

お囃子紹介って、ちょっと裏を見せてもらうみたいで楽しいですよ

英華「うん。普通にいったんではおもしろないから、解説してくれはるおっしょさんが、こっちへ振るやん(笑)。ほな、私は一応、芸人ですから(笑)、ボケたり、ツッコんだりするやん(笑)。それで、お囃子紹介もおもしろいもんやっていうのを知ってもらえたんやろな」

寄席囃子だけをやってる人と全然違いますもんね(笑)

英華「うん。しゃべれるのんがね(笑)」

その頃、なんかおもしろいことってありましたか?

英華「染語楼師匠と二人だけのお囃子紹介ていうのを」

二人?

英華「普通、お囃子紹介いうたら、解説やしぐさなんかをする人が一人おって、で、三味線弾きがいてて、太鼓たたく人、鉦打つ人、ほんで笛吹く人…最低でも、5人、舞台の上に並んでやるねんけど、予算がないとかで(笑)、ほな、二人でしよかと(笑)」

たいへんだ(笑)

英華「最初は一番太鼓の紹介で、“太鼓がモノ言います〜”(太鼓に耳をつけて)“えっ?もしもし?”っていうようなギャグばっかりしてて(笑)。“違うがな〜、♪ドンドンドンと来い♪って鳴ります”(笑)っていうところへもっていくねんけど、そこへ行くまでにボケたおすから、もう、お客さんは大爆笑やったけどね(笑)」

紹介するまでにえらい時間がかかる(笑)

英華「はい(笑)。出囃子いくまでに何分かかんねん、みたいな(笑)」

最初はどんなとこでやったんですか?

英華「落語会の余興みたいな感じで、なんか音のもんって言われて考えたんやけどね。それが妙にウケたりなんかして。まぁでも、二人でやるのは苦肉の策で(笑)、やっぱり、鉦も入り、笛も入り、拍子木も入りした上で、お笑いを混ぜながらするのが、一番いいねんけどね」

高座で噺家さんが一人でしゃべってんのに、裏方がこんなにぎょうさんいてはるん見たら、びっくりしますよね

英華「そうそうそう、何人出てくるねんみたいな(笑)」

テープでしないし、こんなんナマでやってるのん、えらい贅沢ですよね

英華「うん。でも、いまだに、大きいとこ(=会場)やとマイクを通すでしょ、テープや思うてはる人いてはるよ。ナマで入れてるっちゅうのに(笑)。ハメモノ入ってる!って思うねんけど(笑)」

大劇場の商業演劇はテープで流してるから、そう思い込んではるんでしょうね

英華「うん、そうやと思うわ」

もったいないなぁ。ナマでこれだけの人数でやってるって思ったら、贅沢な気分になれると思うのに…

英華「いや、それはね、私ら、御簾の中にいるっていうことは、『無』っていうことやから、演者さんが立てへんかったら、それは邪魔になることになるから、そういうことは、あんまり思ったことないねん。お囃子紹介と、舞台の袖にいる時とでは、全く考え方が変わるから」

なるほど。でも、中には“今日は英華さんが弾いてはるんや”って気がつく人もいるんじゃないですか?

英華「うん、それはそれで嬉しいよ。でも、それとこれとは話が別で、出来たら、私ら音だけで消えてたいもんね。かえって、そういうことをあまり意識せずに、もっと落語を楽しんでくださいって、言うことはあるよ。私ら、舞台袖の一番ええとこで落語聴かしてもうて、一番笑てるわけやからね(笑)」

笑てるんですか?(笑)

英華「私、ものすっっごぅ笑うよ」

へえ〜


英華「好きやっていうのもあるし、何べんも聴いてる噺でも、演者さんによって、息も違うし。もう、覚えるほど聴いてるから。ほな、若い子の噺聴いてても、“この子の声なぁ…、一年二年経ったら変わんねやろけどなぁ”と思てたら、久しぶりに会うたら、“おっ、ええ口跡になってるやん”って、高座降りてきた時に、“あんた、声良うなったなあ”って、つい言うてまうねん。あんまり楽屋でそんな言うたらいかんのかも知れへんけど、なんか褒めてあげたくなってしまって」

ああ、でも、いろんな人の噺を一番近いところで聴いてるプロの人に褒めてもらったら、そら嬉しいし、励みになりますよ

英華「そのかわり、嫌なことも言うからね、私(笑)」

(笑)だからこそ、褒めた時に、よけ嬉しいんやと思いますけど(笑)

英華「あ〜、言うてしもた〜(笑)みたいな」

ひゃははははは(笑)どんなこと言わはるんですか?

英華「向こうから“お姐さんどうでしたか”って訊いてくる時があって、“訊いてくるなら言うたろかぁ?”言うて(笑)。“立て弁で速くしゃべらなあかん時は、速くしゃべるんじゃなくて、一つ一つの言葉を粒立ててしゃべったら、速く聞こえるように、なると、思うよ?”とか言いながら(笑)。ほんまに速くしゃべってしもたら、何言うてるかわからなくなるからね」

ああ、でも、それ、ほんとにそうや

英華「そら、私の三味線かて、若い時はすんごい速いのよ。稽古もしてるし、手ぇもまわるんやろなぁ」

そうでしょうねえ

英華「そのかわり雑よぉ?(笑)。雑な回り方なんやな、やっぱり。弾(はじ)くところも、弾いた音を出さずに、弾いた、という行動だけでいくから、すごい速く弾けるのよ。でも、ある程度の年齢が来て、お稽古の方法とかが変わってきて、一つ一つの音を大事にしたりすると、そんなに速くは弾けない。で、心地好いテンポっていうのが自分でわかってくるんかなぁ…弾きながら、しっかり息が出来るからかもわかれへんけど…。若い時は息が浅いから、速く弾いて、自分で息があがってしまうねん」

<< back page 1 2 3 4 5 6 7 8 next >>
  

HOME