
松尾さん…いや、この呼び方はなんだか違う人のような気がするので、豊(とよ)さんと書かせていただこう。
豊さんは、大阪天満宮の表門前、天神祭のメインストリートで、カウンター式の割烹『豐』を開店して、昨年めでたく30周年を迎えた。
母の敏子さんは、北新地の名妓、西川流の踊りの名手といわれた幸葉(ゆきは)姐さん。
その敏子さんがこの地で始めたのが、料理旅館『松尾』だった。
ご紹介のお客さんだけ、つまり、この店に入るには、常連さんの紹介がなくてはならないのだが、けっして<<一見さんお断り>>的な敷居の高さはなく、いつ行っても、ほんとうに寛げる気持ちのよい店である。
豊さんとの出会いは17、8年前。
名古屋の熱田神宮へ能を見に行ったとき、「きっと気が合うと思うから」と紹介されたのがきっかけだった。
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