log osaka web magazine index

日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


2008年6月号 京都の暑い夏2008ドキュメント


         市田京美+トーマス・デュシャトレのワークショップ体験レポート

                                 レポーター:中山登美子
                                 写真:マライケ・シュパルテホルツ

Creation C-3 5/9(金)〜5/11(日) 全3日
[概要] *京都─神戸 ダンスイクスチェンジ・ワークショップ
9日はピナ・バウシュ作品レパートリーを学ぶ特別レッスン。そしてテクニック・クラスにはじまり、ピナ・バウシュが発展させてきたタンツ・テアターの手法を応用し、即興と対話を重ねていきます。個々に内在する創造性を引き出すこと、またタンツ・テアターの創作過程を経験することにつながっていきます。 5/17〜18に神戸アートヴィレッジセンターで行われる彼等の公演「シャボン〜零と無限の間〜」とリンクした特別WSです。




 
  市田京美+トーマス・デュシャトレ(フランス/リール)共にピナ・バウシュ率いるヴッパタール舞踊団にてダンサーとして活躍。『春の祭典』『コンタクト・ホーフ』『パレルモ、パレルモ』など多数の作品に出演する。'95年デュシャトレがフランスにて独自のカンパニーを設立。'98年より市田も同カンパニーに参加。ダンス指導、リハーサル・ディレクター、ダンサーとして活動を共にする。本年5月には神戸アートビレッジセンター、横浜赤レンガ倉庫での公演を予定。今回のwsではピナ・レパートリーも特別にレッスン。(提供:京都の暑い夏)
 

 最初の1日目はこの日だけが単独受講可能なので、受講者23人が参加。3時間レッスン。
 わたしは今年のワークショップにはこのプログラムのみの参加で、他のワークショップがすでに終わった後の、落ち着いた静かな講堂雰囲気にとても安らかな印象を受けた。3月に東京で観たヴッパタール舞踊団公演、『パレルモ、パレルモ』作品がとても素晴らしく感動残したままなので、市田さんが昔、この作品にも出演されてたと知ってわくわく期待大。1日目は市田さんのみの指導で、先ずはピナ・バウシュがもっとも大切にしていたダンステーマは、自分自身の感情表現を内側から外側へ出すことだと一言力説。最初のレッスンはクラシックバレエを基本としたエクササイズで、腕に力を入れず肩を上げず胸を大きく広げて空間をいっぱい感じ、常に、重心をお腹の下に置いて、そこから上下の反対エネルギーを使うことからスタート。市田さんはそれぞれの受講者のしぐさ欠点をていねいにチェックしながら回る。わたしはお腹をひきしめることを何度も注意されたが、この悪癖習性はなかなか直らない。次に市田さんも出演されてた作品『春の祭典』からのダンス振付け一部に入っていき、大きな動きから小さな動きへと、瞬間変化する切り替え動作はわたしにはとても難しかった。最後は、ピナが高校授業のために振付けた可愛い2拍子リズムの短いくりかえし動き。お尻をつきだし右足、左足を出すステップから手の動きと重ねていく軽快さ。市田さん指導で使う言語はすべていつも英語のみで行うってことで、初日からのこれは予想外で、受講者に一つの緊張感をあたえたかもしれない。市田さんは日本女性ですからね〜。一番びっくりしたのは、市田+トーマスカップルカンパニーのリハーサルでも使わない生音楽付きレッスンでとても贅沢ムード。ピカソの顔に似ているミュージシャン、ジャンポール・バラディフが講堂に置いてるピアノから、他に持参したいろんな楽器(子供用のクラシックギター、タンバリン、クラリネット、ハーモニカ、オカリナなど)をエクササイズや受講者一人一人のダンス発表などに合わせて、センスよくかなでてくれる。受講者はこのメロディのおかげで、少しは緊張がほぐれたのではないだろうか。
 

 
 

 
 

 
 2日目の受講者は13人。途中休憩時間1時間ありで4時間レッスン。
 最初の時間は昨日に続いて、市田さんのクラシックバレエ基本エクササイズ。次にトーマスへバトンタッチして、先ずは手のムーヴメント指導。手を大きく広げ胸を大きくする呼吸法をベースに、速い動きからゆっくり動きへとアクセントを大切にして、強弱リズムを感じる目的である。手の表情動きはその人自身が出るもっとも大切なパートだと語る。最終的には、8つくらいの違う動き組合わせによる、短い振付けダンスを覚えて、受講者一人一人が皆の前で発表。ここで、市田さんが、ピナはダンサーにいつも他のダンサーたちの前で踊るリハーサルを何回もさせて、ダンサーの精神力を鍛えさせたと、コメントあり。わたしは頭では振付けや順番わかったつもりでも、いざ、皆の前で踊るとなると、緊張感で3つだけの振りから後はできなくなり断念。身体への振りは何も入っていなかったようである。他の人の動きをただ見て真似していただけだったと気付き、がく然。次は受講者すべてが予想していなかった、トーマスのカンパニーに所属しているスウェーデン出身の若い男性ダンサー指導による、激しい動きのダンスコンビネーション。わたしはすぐにパスする判断をして見学。ほんとう、若者用のダンスでした。最後にこの振付けによる一人一人のコンビネーション自由ダンス発表で終わり。

 3日目の受講者は11人。昨日と同じく途中休憩1時間ありの4時間レッスン。
 前半時間はやはり市田さんによるクラシックバレエ基本エクササイズ。でも、今日は3拍子リズムで踊る優雅なワルツも入ってて、ペアーでフロアーをいっぱい使って気持ちよく踊れた。ワルツステップは年齢的にわたしに合ってるようだ。後半はトーマスへ代わり、受講者3人組合わせ2つと、4人組合わせ1つに分けて、同じ動きをベースに、2、3のショートダンスを自由に創作するレッスンで、また、最後に発表。ユーモア&エスプリたっぷりのダンスと、人間同志の愛しいつながりムードを感じるダンス。わたしは4人組のほうで、2人ずつが対極に向かい合い、立ったりフロアーに横になったりの動きを、角度とスピードを変えての2つ続きの構築的ダンス。次のレッスンは2日目にトーマスが指導した手のムーヴメント振付けをベースに、自由に即興変化させていくダンス発表。受講者それぞれの身体動き特徴が強く出てて、身体は、その人自身の誤魔化せないそのままを表現するものだと、あらためて実感。ワークショップの最後は、「さよなら」のジェスチャーを2つグループに分けての、遊び感覚たっぷりの動きで、すべて終了。ほんとうに、「さよなら、さよなら」である。しかし、ダンスレッスンには‘さよなら’がなく、永遠に続くでしょう。

 振り返ると、重厚な3日間ワークショップだったが、ピナのテーマである感情表現まで行くにはもっと長期間、必要だったろう。いや、期間は10年単位かもしれない。でも、トーマスは受講者の真面目さと集中力をとてもほめてくれてました。受講者のみなさま、お疲れさまでした。とても有意義な内容でしたよね。また、いつか、どこかでお会いして、このワークショップについておしゃべりしたいです。終わってから、しばらく、日々経過しないと、客観的な感想言葉が出てこないですよね。
 

 

<< back page 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 next >>
TOP > dance+ > > 2008年6月号 京都の暑い夏2008ドキュメント
Copyright (c) log All Rights Reserved.